2022-01-01から1年間の記事一覧
金子みすゞの詩は美しく癒される。彼女の詩は目に見えない世界をも詠んでいる。その意味で宗教的である。けれども、窪寺さんは彼女の宗教性についてこう述べる。 「宗教の機能を認知機能・思考機能・信ずる機能と三分類した。その場合、彼女は認知機能は優れ…
この本は神学と深いかかわりを持っているが、文学である。神学は詩でなくてはならない、とかつて思ったことがあるが、そして、じじつ、ぼくが好んできた神学はどこか詩的なのだが、この本は、文学である。文章が水彩画のように美しい。 ところで、副題に「黒…
とても読みやすく、おもしろい。つまり、何度読んでも意味をつかめずいらいらさせられる難解なセンテンスは出てこない。ほとんどの表現はすらすらっと読める。内容がわかるから、アメリカのキリスト教の歴史はおもしろいと思える。 アメリカのカトリックやプ…
登場人物が豪華。ぼくが名前を聞いたことのある人だけでも、ユスティノス、オリゲネス、アタナシオス、擬デイオニュシオス、アウグスティヌス、アンセルムス、ベルナルドゥス、トマス・アクィナス、エックハルト、オッカム、ウィクリフ、エラスムス、ルター…
イエス・キリストがわたしたちの代わりに十字架で死んでくれたので、神はわたしたちの罪を赦してくれた、と考えるキリスト者がいる。イエス・キリストが示し、従うように促してくれた道を歩むことが大切である、と考えるキリスト者もいる。両方を考える者も…
島さんには人に褒められた記憶がほとんどなかったと言います。しかし、中学生の時、吉田先生から「絵は下手だけど、構図がおもしろい」と褒められたのです。 獄中でそれを思い出し、先生に手紙を書きます。すると、先生が返事をくれたのです。それには、先生…
武田定光さんは浄土真宗の住職であり、ぼくはプロテスタントの牧師ですが、武田さんはぼくがもっとも共感できる宗教者のひとりです。 安易に「まったく同じ」などと言うつもりはありませんが、この本に出てくる宗教思想には、プロテスタントの信仰とかなり強…
お年寄りと介護する人の毎日から生れた詩の数々。 「車椅子の、目線のひくさにももう慣れた」 車椅子を押す人、横に立っている人の目線は高く、車椅子に乘っている人を見下ろしてしまっているのですね。 「糊ですね、どう眺めても、食事というより糊ですね …
著者は自身を「どの教会にも属さないフリー牧師」と言っています。聖書の読み方もフリーなこの著者は、非暴の普及促進活動のなかで、この本に現れるユニークな精神を育んできたのでしょう。 「私が考える限り、「非暴力」とは、以下のようなあらゆる「諸力」…
浄土真宗を学び、僧侶になる直前だった、という方が、いぜんぼくの働いていた教会に通ってくださり、礼拝の説教やキリスト教の読書会などに理解を示してくださり、ひょっとしたら、この方は、キリスト教徒になってくれるのではないかと妄想したことがありま…
教義学と組織神学はどのように違うのだろうか。 「神には、創造者、御子キリスト、聖霊の三つの位格がある」 「神には、創造者、御子キリスト、聖霊の三つの位格がある、という論がある」 ぼくの中では、とりあえず、前者が教義学であり、後者が組織神学であ…
好きな人がいたり、好きな本を読んでいたり、好きな連続ドラマを観ていたりすると、私たちは、生きているのが楽しくなり、生きていよう、という思いになります。この本が伝えてくれることは、これに似ているのではないでしょうか。 世界には愛すべきものがた…
リベラルな先輩がこれいいよ!と勧めてくださったので、すなおに読んでみました。意外にも、ある意味、オーソドックス。でも、やはり、リベラルでした! バプテスマのヨハネは「その方は、聖霊と火であなたたちに洗礼をお授けになる」(マタイ3:11)と言って…
「ヤバい」とはどういう意味なのか。本書の原題はフランス語で DIEU OBSCUR である。ぼくはフランス語は知らないが、DIEU は「神」で、OBSCURは「暗い、薄暗い、 分かりにくい、難解な、曖昧(あいまい)な,漠然とした,おぼろげな」というような意味のようだ…
「土地は神に属するという思想の背景にはどのような発想が隠れているのでしょうか。それは古代イスラエルの人たちが自分たちの先祖を羊飼いと考えたことと無関係ではなかろう、と私は思います」(p.56)。 土地は神のものであるという旧約聖書の思想には大きな…
沖縄が好きだ、という観光客は少なくないだろう。沖縄の海が好きだ、と。沖縄の人はやさしいと。では、米軍基地に抵抗する沖縄の人は好きなのだろうか。つぎのような沖縄の日常生活は好きなのだろうか。 「飛行機が接近すると家全体がガタガタ震えるから、娘…
本書によれば「スピノザは神を自然と同一視しました」(p.23)。けれども、この場合の自然とは「世界全体」のことです。 「神は自然であるだけでなく、「実体 substantia」とも呼ばれます・・・実体とは実際に存在しているもののことです。スピノザが神は実体…
東京都江東区にある真宗大谷派の因速寺の武田住職の講演を起こしたものです。 以前に読んだ本では、キリスト教との共通点を感じ、また、一宗教にこだわらないお考えにひじょうに共鳴しました。 今回は、これらに加えて、キリスト教との相違点も学びました。 …
650 「天を掘る」 「新版 小林秀雄 越知保夫全作品」(越知保夫 (著)、若松英輔 (編集)、2016年、慶応義塾大学出版会) 本書を編集した若松英輔さんがこう書いています。「越知が論じる小林秀雄は批評家であるととともに一個の聖性の探求者である」(p.527)。…
マタイ27:25は新共同訳では「その血の責任は、我々と子孫にある」となっています。この訳だと、「イエスを拒否して十字架で殺した責任はユダヤ人に子々孫々受け継がれているとする考え」(p.21)を生み、現代まで続く「ユダヤ人迫害の根拠」(同)となってしまい…
キリスト教用語に頼らず、もっと一般的な言葉づかいで、キリスト教の神を言い表すことに関心があり、その流れで、半年ほど前から、ティリッヒに立ち寄っている。といっても、ティリッヒについての本を数冊読んだだけで、ティリッヒ自身の著作は、三冊しか読…
題名にあるとおり、この本では、レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』を若松英輔さんと一緒に読むことができます。 センス・オブ・ワンダーとは何でしょうか。不思議を感じること、驚きの感覚、でしょうか。 若松さんはレイチェル・カーソンさ…
王だけではなく、「聖書では、人類すべてが「目に見えない神の、目に見える代理人として、愛と正義をもって世界を治めるために造られた」と主張しており」(p.12)。 これは、聖書のどの個所に基づいた見解だと思いますか。創世記1章27節です。「神は人を自分…
世界では、人が人を支配する、抑圧する、差別する、殺す、踏みにじっています。そして、この不正義に、キリスト教、キリスト教会も加担しています。 この指摘に対して、「キリスト教を『正しく』理解すればそれを乗り越えられる」とか「キリスト教は本来その…
ヒップホップ世代はキング牧師の公民権運動世代とのギャップを感じている、と聞く。けれども、変わらないことがある。黒人が白人警官に棒で殴られ地面に抑えつけられ、射撃され、殺されるということだ。 しかし、それだけではない。抑圧や希望の表現の違いは…
ヒップホップ世代はキング牧師の公民権運動世代とのギャップを感じている、と聞く。けれども、変わらないことがある。黒人が白人警官に棒で殴られ地面に抑えつけられ、射撃され、殺されるということだ。 しかし、それだけではない。抑圧や希望の表現の違いは…
その人の性ゆえに他の人々から差別を受けてきた約20人に、わたしたちとキリスト教が何をしてきたか、その約20人はキリスト教とどのように向き合ってきたか。 出版や文字化、文書化は、本来は多様な存在を「LGBT」という範囲の狭い言葉でまとめたがり、それを…
本書で「災害を考える」ということは、災害防止や対策を考えることではない。では、何を考えるのか。 本書では、寺田寅彦の「天災と日本人」、柳田国男の「先祖の話」、セネカの「生の短さについて」、池田晶子の「14歳からの哲学」が取り上げられている。そ…
副題にあるように、贖罪、文化、歴史、老いを考察する一冊である。 この場合の「文化」は、良質の芸術や文学というよりも、「社会」「社会の支配的な考え方」に近いように思われる。社会の固定的抑圧的な通念に抗う新しい精神の登場が述べられている。 「歴…
暴力的な文章がある。それは、武力攻撃や差別、侮辱、搾取、抑圧と同類だと思う。 石牟礼道子と若松英輔の文章は、暴力的な文章ではない。むしろ、暴力的な文章の暴力性を明らかにしてしまう、平和といのち、悲しみと愛に満ちた文章だ。 ふたりは、書く。わ…