2019-09-01から1ヶ月間の記事一覧

誤読ノート490 「春を告げる野の花」・・・「朝鮮から飛んできたたんぽぽ」(桜井美智子、2019年、書肆アルス)

二十世紀のはじめ、日本は朝鮮に侵略し、植民地にした。炭鉱などの労働力として、多くの人びとを日本まで強制連行した。形の上では強制連行ではなかったが、植民地化され、貧しくされたゆえに、日本に来ざるを得ない人びともいた。 それなのに、「勝手に来た…

誤読ノート489 「父と子どもが仲良くなるには」・・・「流星ワゴン」(重松清、2005年、講談社文庫)

テレビドラマを観てから、原作のこの本を手に取った。主人公の子どもの中学受験の結果、死者となった別の父子の子どもの母親との再会、ラストシーンなど、感動的だった場面は、ビデオによるオリジナルだったようだ。 原作は派手ではない。奇跡は起こらない。…

誤読ノート488 「イエスとイエスの演出家を知るための入門書」・・・「新約聖書のイエス 福音書を読む 上」(廣石望、2019年、NHK出版)  

おそらく、今、日本語では一番新しく、一番安価な(ラジオ講座用のペーパーバックゆえに税別920円!)聖書学のテキストでしょう。 歴史上のイエスはどんな人物であったか、そのイエスという素材を四つの福音書はどのように味付けしたか。世界レベルの最近の…

誤読ノート487 「自死者は犯罪者ではない」・・・「『こころ』異聞 書かれなかった遺言」(2019年、若松英輔、岩波書店)

「自死を『選択』したのではない。その他に道がなかった、というのである」(p.228)。「先生」の手紙を、若松さんはこのように読む。 自死を選択しようとする人がいれば、止めなければならない。しかし、なされた自死は、文字としては矛盾するが、自ら死んだ…

誤読ノート486 「キリスト教が広まらないのは一部宣教師の傲慢と悪徳のせいかも」 ・・・   「キリスト教と日本人――宣教史から信仰の本質を問う」(2019年、石川明人、ちくま新書)

日本にキリスト教が広まらなければならなかったのか。ならないのか。 キリスト教のもっとも良質な部分(この世界は偶然ここにあるのではなく創造されたものであること、その創造者の意志、愛、無償性、信頼、委ね、正義、平和・・・)が人びとに伝わり、人び…

484 「耳を澄ませば、愛されている」 ・・・「『若者』と歩む教会の希望――次世代に福音を伝えるために」(2018年上智大学神学部 夏期神学講習会講演集、2019年、日本キリスト教団出版局)

五人の講演が収録されていますが、まずは、塩谷直也さんの言葉が印象的でした。 「学生たちは愛についての説明が聞きたいのではないのです。そうではなく、愛せない私、愛したけれど裏切られた経験、愛されたけれど相手を見捨てた経験、それを共有したいので…