2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「星の王子さま」の「原作者の遺族公認」のコミック、池澤夏樹訳を読みました。一〜二年前に河野万里子訳を読んだのに、王の星あたりに来るまで、ストーリーを思いだせませんでした。 よく言われていることなのかも知れませんが、王や大物気取りの男、地理学…

11 「ちっぽけな実証よりも、言葉が生む可能性を」

ときおり会えばあたたかで、ふだんはやや離れたところで見守っていてくれるように感じている人が、近くにやってきて24時間すぐそばにいるようになれば、だんだんと冷たくなり、わたしたちの一挙手一投足を支配し始めるかもしれません。 自称、他称による「再…

8 「人さまに働きかけるときにテメーに用いるべき技術」

「対人援助の技法」(尾崎新) タイトルからすれば、この本は援助する相手に対して用いるテクニックを伝えようとしていると思われるかもしれませんが、そうではありません。この本で語られているものは、「援助者が自分にどのように関心を向けるか、自分の感…

10 「顔があるから」

三週後、仙台の知人に会いに行く予定にしています。まだ一度も被災者を訪ねていないし、被災地に赴いてもいませんが、時機を見て被災地にと、思ってきました。 なぜ、まだ行っていないのでしょうか。自動車を運転しないこと、三〜四泊以上というボランティア…

7 「メンタルとソーシャル」

「うつ病を体験した精神科医の処方せん」(蟻塚亮二) 「いじめの直し方」(内藤朝雄、荻上チキ) 人がうつ病になるのは、その人の個人的な性格だけによるのではなく、その人をとりまく環境も大きく影響する、と蟻塚さんは言います。どんな性格の人でも、長…

9 「薄皮をそっとめくる」 

人々がイエスに「そのパンをいつもわたしたちにください」(ヨハネ6:34)と言うと、イエスは「わたしが命のパンである」(6:35)と答えました。人々が求めたものはパンという物質(あるいは方法、処方箋、秘薬、知恵・・・)だったのに、イエスは物質ではな…

6 「未熟を自覚している者が世話役に」

井上ひさし 「グロウブ号の冒険」 1980年代末に井上ひさしが雑誌に連載していた小説が未完のまま、逝去後一年経ったこの四月、単行本として刊行されました。 主人公が流れ着いたのは名前のない島。名前だけでなく、保存食もなく、最終的な権威付けをする者、…

8 「他者の前に体をおく」 

十字架の死後、弟子たちの真ん中にあらわれたイエスは、自分は亡霊などではない、手があり足がある、肉があり骨があると自らの体を示し、焼き魚一切れを食べた、とルカは語っています(24:36-43)。 亡霊ではない、体もしっかりある、これはどういう意味でし…

5 相対的な表象であっても、そこに没入するまじめさ

「イエス 時代・生涯・思想」(J. ロロフ、教文館) まもなく神がこの世界を治めてくださる、いや、それはもう始まっている、しかも、自分という人間の言葉や行動を通して。イエスはこう確信していたと、この書の著者ロロフは述べているのだと思います。 け…

7 「ともに歩いている! ということは、復活したんだ! 復活の逆算」

イエスが今わたしとともに歩いていてくれる、と感じるのと、イエスの死体が医学的に蘇生した、と確信するのでは、どちらがやさしいでしょうか。おそらく、前者ではないでしょうか。わたしたちは、死んだ誰かが生き返ったということを論理的に信じられなくて…