2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

171 「聖書の言葉にじっと耳を傾け、それにこたえて祈る生活」

「教会づくり入門」(榎本保郎著、教文館、2013年新装第1版) オリジナルは四十年前。タイトルは「教会づくり」だが、中身は「信仰生活入門」。教会にもっと多くの人を集めるヒントを、などという、ぼくのさもしい考えを見透かされたようです。たしかに、ハ…

170 「整った論や説からではなく、雑音交じりの談と話から聞こえてくる百年後の福島」

「シャッター商店街と線量計」(大友良英著、青土社、2012年) 権力者サイドからであっても、脱原発の側からであっても、オキマリの「〇〇論」からはわからない、雑談、葛藤、ノイズから見えてくる福島の人々の現実と未来。 テーマは、ふたつで、ひとつ。全…

169 「遠さを少しでも縮めたいと願う者たちのコスト」

DVD映画「フタバから遠く離れて」(船橋淳監督、新日本映画社、2014年) 地震、大津波、原子力発電所事故に襲われ、いまだ苦しみ、苦しめられ続けている人々や地域のことを忘れないで、ずっと覚え続け、自分の人生の大きな課題とし続けるためには、かなりの…

168 「いいせりふを持ちてえなあ」

「井上ひさし 「せりふ」集」(井上ひさし著、こまつ座編、新潮社、2013年) ひさしファンにはありがたい一冊。でも、それ以外の人には、一頁に一台詞で130頁で1200円。ちょっと高いというか、新作はもうでないけど、「井上ひさし」の名前はまだ商売になると…

167 「美しい否。賢治の生きた農村が、細かな線と押さえた水彩色で、頁をめくるごとに立ち現われる」

「雨ニモマケズ Rain Won’t」(文・宮沢賢治、英訳・アーサー・ビナード、絵・山村浩二、今人舎、2013年) ビナードさんが賢治を英訳したなら、山村さんは、賢治を、絵訳してくださった。 いわば「和風」の作品で、世界に認められたアニメーション作家、山村…

166 「五十の人生、五十の読書」

「17歳のための読書案内」(筑摩書房編集部・編、ちくま文庫、2007年) ぼくより、ちょっと有名で、ずっと深く考える四十九人の執筆陣が、ひとり何冊かずつ、本を紹介。おもしろいのは、それらの本の中身だけでなく、寄稿者の紹介の仕方。そこにちらっと見…

165 「事実に基づく真実。真実を描く事実でない物語」

「イエスとは誰か 史的イエスに関する疑問に答える」(ジョン・ドミニク・クロッサン著、飯郷友康訳、新教出版社、2013年) 聖書には、事実としてにわかに受け入れがたい奇跡などのお話もありますが、それで相手にしないのは非常にもったいないことです。ま…

164 「大水害と被爆の再時代のわたしたちへ、死者からの口伝」

「少年口伝隊 一九四五」(井上ひさし、講談社、2013年) 短く、すぐ読め、再読せずにはおられず、胸を打たれます。ぜひお読みください。 さて、自然災害と原爆による大量殺戮を混同してはなりません。 しかし、2010年に逝去した井上ひさしさんがその二年前…

163 「静かに聴かせてくれる静かな映画」

映画「楽隊のうさぎ」(中沢けい原作、鈴木卓爾監督、2013年) 「うさぎ」なのは、アリスのように不思議な国、あたらしい世界、中学校生活、吹奏楽部への案内人ってことだな、と納得していたら、もうひとつ、わけがありそうです。 引っ込み思案の中一の男の…

誤読ノート162 「子どもはさっきまで天使だった。老人はまもなく天使になる。」

「カールじいさんの空飛ぶ家」(ディズニーアニメ映画、2009年) 子どもの気持ちに弱い。悲しかったり、寂しかったり、歯を食いしばったり、うれしがったりする子どもの心が伝わってくると、涙が出そうになる。ラストシーンは歯を食いしばらなければならなか…

161 「あの人、が、おかあさん、になる時」

映画「麦子さんと」(堀北真希主演、𠮷田恵輔監督、2013年) おかあさん、と母のことを呼び始めたのは、いつのことだったでしょうか。 もう思い出せない遠い日のことですが、ひとはおとなになって、もう一度、おかあさん、と言ってみたくなる時が来るのかも…