2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

594  「信仰者はそれを神と呼び、そうでない人はそれを、何か尊いものと呼ぶ」 ・・・ 「宗教ってなんだろう?」(島薗進、平凡社、2017年)

イスラム教、仏教、キリスト教と言った特定の宗教を信じていなくても、人間には、宗教心があります。 そして、特定の宗教が特定の表象(言葉)で言っていることは、人間一般の宗教心ではどのように言われているのか考えてみることで、特定の宗教の意味が深ま…

593  「祈りとはそこに赴くこと」 ・・・「マイカルの祈り: 9.11同時多発テロに殉じた神父の物語」 (中村吉基、あめんどう、2021年)

2001年9月11日午前、ワールドトレードセンター内で天に召されたマイカル・ジャッジ神父が、いつも唱えていた四行の祈り。 著者は、その一行一行を、神父の行動、聖書の言葉や物語、著者自身の経験に照らして、噛み締めていく。 聖書とイエスを信じる者たち、…

592  「生存者の罪悪感と死者の自由、その距離」・・・・・「貝に続く場所にて」 (石沢麻依、講談社、2021年)

わたしは3月11日の被害者ではない。友人に被災者はいるが、死者はいない。わたしは、ただ、というか、不遜にも、5月に仙台を訪問し、停電や水不足、初期の支援奔走を経験した友人の車で、あの道路の向こう側にまで案内していただいたものに過ぎない。 「仙台…

591  「モーセのこころ、イエスのこころ、中村哲さん」・・・「希望の一滴 中村哲、アフガン最期の言葉」(中村哲、西日本新聞社、2020年)

著者はキリスト教プロテスタントの西南学院中学で洗礼を受けたという。しかし、彼はキリスト教を広めようとすることはまったくない。むしろ、イスラム教や人間の宗教心一般を尊重する。 それにもかかわらず、この本には、モーセも登場する旧約聖書の精神、ヴ…