2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

誤読ノート498 「夫の過去を報告する弁護士の最後の言葉が」・・・「ある男」(平野啓一郎、2018年、文藝春秋)

たとえば、ある過去やある背景があると知ったとき、わたしはその人とどう接するだろうか。 それゆえに、その人を怖いと思ったり、悪人と見なしたり、蔑視したり、差別したりするだろうか。 それとも、その人の過去や背景の厳しさを理解し、あるいは、理解し…

誤読ノート497 「キリスト教会の外にある救い」・・・「ヒップホップ・レザレクション」(山下壮起、2019年、新教出版社)

誤読ノート497 「キリスト教会の外にある救い」 「ヒップホップ・レザレクション」(山下壮起、2019年、新教出版社) 「解放の神学」を30年ほどまえに読み始めたころ、神は教会だけでなく、いやむしろ、教会の外で働く、というフレーズに強く惹かれた。 タイ…

誤読ノート496 「新約聖書の『意外』さ」・・・「NHK宗教の時間 新約聖書のイエス 福音書を読む(下)」(廣石望、2019年、NHK出版)

たとえ話、神の国、食卓、最後の晩餐、死、復活という項目で、福音書に書かれたイエス像を概観、いや、かなり専門的に論述しています。聖書学の知識がない一般読者やリスナー(ラジオ「宗教の時間」のテキスト!)には、相当「意外」ではないでしょうか。 ま…

誤読ノート495 「ダメ牧師を慰める書」・・・「種まく人」(若松英輔、2018年、亜紀書房)

若松さんのエッセイ集。 若松さんは井上洋治神父を師と呼ぶ。「神父の生涯は、人々に、言葉といういのちの炎を届けることにあった」(p.13)。 若松さんもまた、著作を通して、コトバを、いやコトバそのものではなく、コトバの炎を、わたしたちに垣間見せてく…

誤読ノート494 「本が読めないときは、若松英輔さんを読もう」・・・「本を読めなくなった人のための読書論」(若松英輔、2019年、亜紀書房)

酷い目にあった。相手に非を認めさせたい。うまくいかせたくて仕方がないことがある。そういうときには、若松英輔さんを読む。 悲しいとき、苦しいときには、本が読めなくなる。そういうときには、若松英輔さんを読む。若松さんのエッセイを読む。小型の本、…

誤読ノート493 「茨木のり子を読むための参考書」・・・「花神ブックス1 増補 茨木のり子」(花神社、1996年)

茨木のり子さんの自選詩63編、童話、エッセイ、本の後書きなどに加えて、川崎洋さん、新川和江さん、吉野弘さん、工藤直子さんらの「茨木のり子について」約20編が収められています。 「やわらかな人間のおかしみと、決然たる意志が、歴史に向かってひらかれ…