2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

101 「あとにつづくものを信じて走った井上ひさしさん」

「水の手紙 群読のために」(井上ひさし著、萩尾望都絵、平凡社、2013年) 井上ひさしさんと萩尾望都さんという、おもいがけないコラボ。 小学生の副読本にでもなるような平易な文章。 井上さんの芝居や小説、エッセイを知る者には物足りない。 けれども、そ…

100 「憎みながら、信じるんです・・・・・・・もう、ぐちゃぐちゃなんです」

「木の上の軍隊」(井上ひさし原案、蓬莱竜太作、「すばる 2013.5」所収) 沖縄、伊江島。 敗戦後、二年間、ガジュマルの大樹に身を隠していた兵士たち。 沖縄出身の新兵。他府県からの上官。 井上ひさしは、この事実を根っことする戯作の構想メモだけを残し…

99 「技術って言うより、姿勢かも」

「プロカウンセラーの聞く技術・話す技術」(監修:諸富祥彦他 編集・発行:マルコ社) ぼくは人の話を聞くのが苦手。 これまで読んだ本で学んだように、傾聴して、相手の気持ちに寄り添おう、と思っていても、相手の話に集中しようとすると、力が入って、五…

98 「ぼくは何をしてきて、何をしていく」

「私はだれでしょう」(井上ひさし、「すばる 2007年3月号」所収) 戦災で離ればなれになった人々を再会させようとするNHKラジオ番組「尋ね人」。 そのスタッフは、ラジオが生んだ大スターだった京子、同じく元アナウンサーで今は脚本家をめざす三枝子、神田…

97 「信仰なき者はどうなる?」

「マルティン・ルター ―ことばに生きた改革者」(徳善義和、岩波新書、2012年) 信仰のない人は、神に救われないのだろうか。 信仰の弱い人は、どうなのだろうか。 信仰によって、神から義とされる(神の前に立つことが許される、滅ぼされない、という意味だ…

96 「井上ひさしさんは、ガリバーだった?」

「ガリバーの冒険」(井上ひさし/文 安野光雅/絵、文藝春秋、2012年) 井上、安野ファンには、たのしい一冊。44年前、この最高コンビによって、ガリバーの絵本が出ていた。ふたりでの最初の仕事?井上さんが旅立って二年目の春(2012年)、安野さん…

95 「他力の徹底は、他力の相対化か」

「宗教のレトリック」(中村圭志、トランスビュー、2012年) レトリックと言うと、現実から離れた、あるいは、現実をごまかすための、机上の巧みな言葉遣い、という印象もあるだろう。 けれども、言葉以前の何かを、どうにか言葉にして伝えるための手法、と…

94 「ケセンの黄金伝説は、えっ、そんなところにまで」

「ヒタカミ黄金伝説」(山浦玄嗣、共和印刷企画センター、1991年) ケセンは黄金の大産地だった。しかし、八世紀、ヤマトはそれに目をつけ、侵略を激しくする。ケセンやエミシ(※)の民は、アテルイなどのリーダーを掲げ、よく抵抗する。 ヤマトの支配浸透は…

93 「言葉の天才による、言葉をテーマにした短編小説集」

「言語小説集」(井上ひさし、新潮社、2012年) 井上ひさしさんは、言葉の天才です。 けれども、井上さんの言葉は、みやびやかでもなければ、官能的でも、すずしげでもなく、あるいは、スマホのカメラで撮ってネットに載せた写真のようにくっきりあざやかで…