661   「お年寄りの目から見た介護」 ・・・「最後の椅子」(齋藤恵美子、思潮社、2005年)

 お年寄りと介護する人の毎日から生れた詩の数々。

 

 「車椅子の、目線のひくさにももう慣れた」

 

 車椅子を押す人、横に立っている人の目線は高く、車椅子に乘っている人を見下ろしてしまっているのですね。

 

 「糊ですね、どう眺めても、食事というより糊ですね

  ご飯のすがたはどこにもない

  栄養だけが並んでいる」

 

 食べやすさと栄養を重視すると、食事は糊になるのでしょうか。食事は楽しみですが、おいしくない食事にはがっかりしますね。年をとるとはご飯がおいしくなくなり楽しくなくなるかもしれないということなのでしょうか。

 

 「ことばのかわりに暴力が、飛び出すこともしょっちゅうだ

  歯形をつけられ、あざを腫らし

  レンズをなんども砕かれながら

  敵意ではない、言語なのだと、鈍い痛みを

  受けいれる」

 

 どういう意味で言語なのでしょうか。この不安、このストレス、このイライラ、この不便。どうしても外にあふれ出てしまう。悪いけど、あなたが受け止めてください、というメッセージ、いや、行為でしょうか。

 

 「否定、をしてはいけないのだ

  いますね猿が、九匹も

  でもだいじょうぶ

  捕まえますよ」

 

 これはどういう意味でしょうか。つぎの段落で解説されています。

 

「Sさんにも

 妄想にも

 明るくさりげなく寄り添って

 しばらく、こぶしをなだめるように、包みこんであげること

 お年寄りのまぼろし

 世界に、付き合ってあげること」

 

 でも、Sさんも介護する人に対して、同じことを想っているのかもしれない、と思いました。

 

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