2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

(43)「わからないけれども大事なものを迎えること」

「世界のことがわかってきたような気になるのは、わからないものを切り捨てていくからである」。これは「バカの壁」の著者にして解剖学者の養老孟司さんの言葉だそうです。哲学者の鷲田清一さんは朝日新聞のミニコラムでこの言葉を紹介し、(養老さんは)「…

364  「逆襲だけでなく、反省もしなければなりません」 「蒲田の逆襲 多国籍・多文化を地でいくカオスなまちの魅力」(田中攝著、言視舎、2016年)

はじめて蒲田を訪れたのが二十五年前。それから、週に一度くらい通うようになり、やがて、JR蒲田駅からバスで十分くらいのところに住むようになりました。さらに、蒲田一丁目の住民になって、はや十数年が経ちました。 たしかに、韓国人、中国人の友人・知人…

363  「聖書以外のことを持ち出して、聖書の話を説明したらどうなのだろう」  「教会を通り過ぎていく人への福音 今日の教会と説教をめぐる対話」(ウィリモン、ハワーワス著、日本キリスト教団出版局、2016年)

大学のチャプレンであるウィリモンがチャペルで学生相手になした説教と、神学者ハワーワスのそれに対するコメントが交互に載っています。 ウィリモンの説教はよく練られていて、とても参考になりましたが、教会に慣れていない学生たちが退屈しないで聴くかな…

(42)「弱い人を助ければ、神さまにしたことになります」

笠地蔵という日本のお伽話があります。貧しいおじいさんが笠を売りに出かけますが、ちっとも売れません。売れないと、年越しのお餅すら買えません。けれども、吹雪模様となり、あきらめて家路につきます。途中、七つのお地蔵さんが雪に晒されているのを見て…

362  「世界はライオンの歌で創られる」「ナルニア国物語(1) 魔術師のおい」(C. S. ルイス著、土屋京子訳、光文社、2016年)

ぼくがナルニア国を訪れたのは、今回で4回目です。最初は、ぺーパーバックの原書。わからない単語があっても辞書を引かなかったので、かなりの推察力、想像力を要求されましたが、その分、知的な訪問でしたし、知的な物語に感じました。 二度目は、岩波の瀬…

(41)「日は誰の上にも昇ります」

沖縄の離島に一泊したことがあります。宿の庭の芝生にあおむけになって、上を見ると、満天の星空でした。東京では夜空をすみからすみまで見渡して星を探さなければなりませんが、その島では散りばめられた無数の星粒の間にようやく夜の闇が顔をのぞかせてい…

(40)「美しさを誰にも惜しまない花を、花瓶にさし、木枠の出窓においてみます」

花は見る人の心をなごませてくれます。花はその美しさ、愛らしさ、明るさ、あざやかさ、望みを、さらにいえば、その哀しさ、その痛みを、誰に対しても惜しむことはありません。花は誰にでも無条件にそのいのちの姿をあらわし、見る者、触れる者、香りを受け…