2020-11-01から1ヶ月間の記事一覧

540 「宗教の合理と神秘」・・・「般若心経(100分 de 名著)」(佐々木閑、2013年、NHK出版)  

著者によれば「釈迦の仏教」は「この世界の因果則は厳然たるものであって変えることはできない。だから、特別な努力をして自分の心のあり方のほうを変えよう。それによって生きる苦しみに打ち勝っていこう」(p.72)というものでした。 けれども、自分の力でそ…

539「神はしずかに、おくそこに」・・・「必ず道は開かれる」(越前喜六、2020年、日本キリスト教団出版局)  

神はどこにいるのでしょうか。 「あなたは自分の屋敷や土地の中に、莫大な宝が隠されているのがわかっていない。思い切って、道具を使い、土地を掘ってみなさい。そうすれば、宝物が見つかるでしょう」(p.21)。 これは本書で引用されている説話に出てくる言…

538 「自分の外にあるものに、開かれ、つながる」・・・「神谷美恵子『生きがいについて』(100分 de 名著)」(若松英輔、2018年、NHK出版)  

人から称賛され、自分も満足できる地位に就く。多くの財産を手に入れる。神谷美恵子さんや若松英輔さんが語る「生きがい」とは、そのようなものではありません。 この本を読んで、生きがいとはぼくの外とのつながりのこと、だと思いました。そして、ぼくの外…

537 「死者も集うふね」 ・・・ 「須賀敦子全集 第1巻」(須賀敦子著、河出文庫、2006年)

須賀敦子さんの名前を初めて聴いたのは、十数年前、精神科医にして思想家とも言うべき中井久夫さんの本の中でだ。中井の絶賛につられて須賀のエッセイ集を読んでみたが、そのときの印象は、中井同様の類まれなる文章家にして教養人、というものだった。 今年…

536 「二億人が参加する『農民の道』」・・・「人新世の『資本論』」(斎藤幸平著、集英社新書、2020年)

二酸化炭素の排出を今よりもずっと抑えなければ、地球は温暖化し、人が生活するには非常に厳しい環境になってくる。それは、今世紀すでに進行しつつあり、貧しい国の人びと、貧しい人びとがまっさきに被害者になる。この人びとは前世紀からすでに富の収奪と…