2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

590 「公平な分配と自己犠牲」・・・「ケノーシス: 大量消費時代と気候変動危機における祝福された生き方」(サリー・マクフェイグ、新教出版社、2020年)

誤読ノート590 「公平な分配と自己犠牲」 「ケノーシス: 大量消費時代と気候変動危機における祝福された生き方」(サリー・マクフェイグ、新教出版社、2020年) 370頁の大著だが、多くのことがらが記されているわけではない。地球環境を破壊する大量消費、そ…

589  「一神教は攻撃的ではなく、むしろ」 ・・・「一神教の起源 旧約聖書の『神』はどこから来たのか」(山我哲雄、筑摩選書、2013年)

旧約聖書は一神教である。たいていの人はそう思っているだろう。 しかし、著者は、旧約聖書学の最新成果を踏まえて、旧約聖書全体に一神教が完全に貫かれているわけではない、「唯一神的神観が最も集中的に見られるのは、イザヤ書四三-四六章である」(p.340…

588  「この世界の深みとは何か」・・・「神への誠実」(J.A.T. ロビンソン、日本基督教団出版局、1964年)

「イエスは彼らが見ているうちに天に上げられたが、雲に覆われて彼らの目から見えなくなった」(使徒言行録1:9) 聖書に書かれていることを一言一句事実であると信じる人びとでも、わたしたちがロケットに乗って雲より高く高く昇って行けば天に行ける、と考…

587 「ノロはなぜ女性だけなのか」・・・「彼岸花が咲く島」(李琴峰、文藝春秋、2021年)

その島では、男は祭司、神官にはなれない。歴史の語り部にもならない。いや、歴史そのものを知ることはできない。なぜか。それになろうとする少女と、それになろうとするが許されない少年。その理由は、巻末で一挙に明かされる。 東アジアのある国は、ある人…

586 「人間は本来どこにいるのだろうか」・・・「キリスト教思想史の諸時代Ⅱ アウグスティヌスの思想世界 」(金子晴勇、ヨベル新書、2021年)

アウグスティヌスは四世紀後半から五世紀前半の人である。本書の著者によれば、この時代には「個人の内面的な世界が生まれてきた」。そして、「ここには孤独な個人を内側から支える『大文字で書かれた単数形の神』が説かれるようになった」(p.20)。 それはキ…

585 「説教をできなくなった牧師さんへの良いお知らせ」・・・「演劇入門 生きることは演じること」(鴻上尚史、集英社新書、2021年)

誤読ノート585 「説教をできなくなった牧師さんへの良いお知らせ」 「演劇入門 生きることは演じること」(鴻上尚史、集英社新書、2021年) ぼくはキリスト教会の牧師で、毎週、礼拝の脚本、演出、出演を担当しています。つまり、その日曜日の礼拝の流れ・構…

584 「能力は私的所有物ではない」 ・・・「(双書 哲学塾) 新自由主義の嘘」(竹内章郎、岩波書店、2007年)

新自由主義とは、財産や能力は個人の私的所有物であり、それを他の人のそれと等価交換する自由があり、それについて契約する自由があり、私的所有物は自分の好きに使える、といった考え方であり、これが今の世界を覆っています。 ようするに、人は皆自由なの…

583 「歴史的、神学的、哲学的聖書解釈が一人の中で協力しあう」 「内村鑑三 その聖書読解と危機の時代」(関根清三、筑摩選書、2019年)

副題にある「危機の時代」には、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、関東大震災が含まれる。 内村ははじめ「義戦論」を唱えた。のちに非戦論に転じたのではあるが。内村はまた、関東大震災は「天譴」つまり天罰であると論じた。 これらは内村の問題思想と…