2015-10-01から1ヶ月間の記事一覧

285  「目に見えない世界の根源を眺められる日が来る予感」

「白い鹿」(版画:ヨゼフ・ドミヤン、詩:押田成人、日本キリスト教団出版局、2015年)はじめて読んだとき、その版画も、墨で書かれた詩も、理解不可能でした。意味あるもの、はっきりしたものとして、頭に入って来ないのです。できることは、ただページを…

284  「復興とは最も困難な人が生き生き暮らせるようになること」

「ふくしまノート2」(井上きみどり、TAKE SHOBO、2015年) 原発事故以来、福島の人びとは放射能汚染問題をどのように考え、取り組んできたのでしょうか。著者はそれを丁寧に取材し、十編のマンガで伝えています。 食品や土などの放射能を自発的に測定してい…

283  「宣言や数字だけからは伝わらない福島の人びとの生きた声」

「ふくしまノート1」(井上きみどり、TAKE SHOBO、2013年)放射能から家族を守ろうと会津に避難している方々のお話しをうかがったことがあります。また、強制避難区域に残した家や土地に帰れる日を待ちつづけ、線量の低下に希望を抱きつつも、はたして大丈…

282  「秘密とは(あるいは「秘密を」)内側でゆっくりとふくらませ感じること」

「クローディアの秘密」(E. L. カニグズバーグ、1975年、岩波少年文庫)良質な児童書は大人にとっても読みごたえがあります。子どもたちを成長させる栄養は、おとなの心も育んでくれます。「チームになったというのは、いい争いがやんだという意味ではあり…

281  「命がけの答え」

「ダイヤモンドより平和がほしい」(後藤健二、2005年、汐文社) アフリカ、内戦のシエラレオネ。兵士らは家を襲い、両親を殺し、子どもたちをさらい、あらたな兵士に仕立てます。少年兵士らは、大人の兵士に教えられるままに村や家を襲い、人びとの手足を切…

5「来年、もう一度、わたしはここに来る」

なんて歴史なんだ なんて世の中なんだ あんなに叫んだのに あんなに訴えたのに なんて人生なんだ なんて生涯なんだ こんな年になってしまった こんなざまで もう終わってしまうんだ あなたを祝福しよう あなたに恵みを与えよう もう何年も残されていないのに…

4「発ちなさい」

なんてひどい王だ なんてでたらめな連中だ 愛も知恵もなにひとつない あるのはただ劣情だけ ぼくたちの言うことは すべて斥ける 勝手奇妙なことを並べ立て すべてを決める 自分はずるくなどないとにやつく 正当なことだとうそぶく 多くの者が賛成しているな…

280  「世界レベルのチーズを共に創りながら学んだこと」

「みんな、神様をつれてやってきた」(宮嶋望、2008年、地湧社) 宮嶋さんは世界有数のチーズを創り出した共働者たちのひとり。新得共働学舎代表。「しんとく」と読みます。地図で見ると北海道の真ん中。富良野の近くと言えば近くです。 自由学園で過ごした…

3

静かだったその島が 四十日四十夜 大雨に見舞われた 地は水で覆われた 水嵩は増し続け 丘の頂をも呑み込んだ 鳥も家畜も獣も虫も人も ことごとく息絶えた ただ箱舟だけが 海原に漂っていた 百五十日経っても 水は撤退しない と、小さな風が吹いた 風は日に日…

279  「覚めることのない魔法」

「魔女ジェニファとわたし」(E. L. カニグズバーグ、1989年、岩波少年文庫) 十才のエリザベスは、ハロウィンに出会ったジェニファに少しずつ魅了され、魔女見習いになります。そして、過ごした六か月の日々。 このお話しにはどんなメッセージがあるのでし…

最後の角に差し掛かり いにしえのこころざしが 浮かび上がってきた 果たされる前に 旅は終わるだろう けれども こころざしは 引き継がれる 弟子はおらず 文字は残さず 感銘は与えずとも ぼくが知らず ぼくを知らない 誰かによって 地下流のように

敗戦は敗北ではない 勝てないことはあっても 負けて全員逃げ出したことなど いちどもない いくども敗戦を重ねてきた 勝った戦いなどほとんどない けれども もう誰も立ちあがらなくなったことも もう誰もつづかなくなったことも そんなことは いちどもない 世…

278  「ぼくたちの根はぼくたち自身の奥底に」

「存在の根を探して イエスとともに」(中川博道、2015年、オリエンス宗教研究所) ここに「存在」するぼくたちの「根」はどこにあるのでしょうか。カルメル修道会の司祭が聖書の言葉からそれを説き明かしてくださいました。 「これを見て、よしとされた」。…

277  「朝鮮詩人からの伝言集」

「朝鮮詩集」(金素雲訳編、1954年、岩波文庫) 歌手の沢知恵さんの祖父・金素雲さんが、日本の植民地支配下の朝鮮の四十の詩人から百の詩を朝鮮語から日本語に翻訳し、編纂したもの。茨木のり子さんも愛読したと言います。「あの 栗の木の下に/實の落ちる…

276  「世界とぼくの根源、その愛」

「涙のしずくに洗われて咲きいづるもの」(若松英輔、2014年、河出書房新社) 神などいるわけがない、死者がここにいて語りかけてくるはずがない、と思う人でも、自分には何か、起源か根源か、そのようなものがあることをまったく否定してしまうことはできな…

282  「秘密とは(あるいは「秘密を」)内側でゆっくりとふくらませ感じること」

「クローディアの秘密」(E. L. カニグズバーグ、1975年、岩波少年文庫)良質な児童書は大人にとっても読みごたえがあります。子どもたちを成長させる栄養は、おとなの心も育んでくれます。「チームになったというのは、いい争いがやんだという意味ではあり…

275  「世界全体ではなくおやゆびをものさしに」

「日本人は状況から何をまなぶか」(鶴見俊輔、2012年、SURE) 鶴見さん2010~11年の雑誌や新聞記事集。Think globally, act locallyと言いますが、鶴見さんはthink locallyの思想家かも知れません。「おやゆびのものさしをもって、まわりのものをはかるとい…