2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

259  「女性を観る眼と語る筆がやさしい」

「東慶寺花だより」(井上ひさし、文藝春秋、2010年) 大泉洋主演の映画「駆込み女と駆出し男」の原作。監督は原田眞人。満島ひかり、内山理名、キムラ緑子、木場勝己、戸田恵梨香、樹木希林、 堤真一らも好演。 井上ひさしさんの大ファンとしては、見逃せな…

258  「日中韓はもっと詩的に」

「ハングルへの旅」(茨木のり子、朝日文庫、1989年) 歌手・沢知恵の母親の父親は、詩人・金素雲だ。岩波少年少女文庫にある朝鮮民話選「ネギをうえた人」の編者でもある。 この金素雲の「朝鮮民謡選」を、茨木のり子は少女時代に愛読していたという。ハン…

257  「相手の言葉を殺さずしっかり受け、自分のいのちを重ねて投げ返す」

「酔うために飲むのではないからマッコリはゆっくり味わう (日韓同時代人の対話シリーズ01)」(谷川俊太郎、申庚林、2015年、クオン) 韓国の国民詩人、申庚林(シン・ギョンニム)が谷川俊太郎と一緒に詩を作った。「対詩」と呼んでいる。谷川が五行記し、…

256  「朝まだきは朝未来と書くものだったんだ」

「ライは長い旅だから」(谺雄二、趙根在、皓星社、2001年)少年はライの尾根へと追い立てられた 尾根は海から遠く、雲は晴れない 尾根はどしゃぶりの雨に打たれる 尾根は海に恋する 南朝鮮生まれの金丘俊の眼差しが 尾根の空に突き刺さる ボクは尾根の笹む…

255  「戦場(いくさば)で生まれた戦場カメラマン」

「フォト・ストーリー 沖縄の70年」(石川文洋、岩波新書、2015年) 石川はベトナムを撮り、甲子園を撮った。両者を石川につないだのは、沖縄だ。石川は沖縄生まれ。在日沖縄人と自称する。もちろん、沖縄も撮った。 石川は祖母から沖縄戦を聞いた。その話は…

254  「否定に打ち克つ根源的肯定」

「トマス・アクィナス 肯定の哲学」(山本芳久、慶應義塾大学出版会、2014年) トマスと言えばスコラ哲学、スコラ哲学と言えば、重箱の隅をつつくような机上の空論、冷たい学問と思いがちです。けれども、この本を読んで、たしかに緻密な議論はするけれども…