2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

223 「世界の現状を伝え、問う演劇の元祖」

「三文オペラ」(ブレヒト作、岩淵達治訳、2006年、岩波文庫) ぼくは、プロの演劇経験のある日系ペルー人の友人に誘われて、半時間ほどの劇の共同創作に加わったり、舞台に立ったりしたことがあります。 それから、そのずっと前から、井上ひさしさんの芝居の…

222 「のり子の詩ごころ、一ダース」

「詩のこころを読む」(茨木のり子、1979年、岩波ジュニア新書) しゅんたろう えりこ ひろし るみこ ひろし りん 詩を詠むこころ 詩を読むこころ 死をよむこころ いち いのちいとしむ こころをさそう にい 何か忘れていませんか さん 死と影を 恐れない しい…

221 「顔と言葉と音楽は、天と大地を通わせる」

「フォト・ソングブック 美しい大地は」(写真:桃井和馬、選詞:陣内大蔵、2014年、日本キリスト教団出版局) 写真家・桃井和馬さんの撮ったフォトに、シンガーソングライターで牧師の陣内大蔵さんが選んだ讃美歌21の歌詞が、しずかに寄り添っています。そし…

220 「いま、ここにあるすべての人の救い」

「キリスト教の自己批判 明日の福音のために」(上村静、2013年、新教出版社) この本には、贅肉がまるでありません。わりと短い時間で読めるかも知れません。けれども、中身は味わい深く、きっと満足できることでしょう。 神の救いは、「いつか、こういう人び…

219 「泥沼に咲く蓮たち」

「その先の世界へ」(長倉洋海、2014年、クレヴィス) スリランカでは、祈りの花には、蓮が好まれる、と長倉さんは言います。泥で濁った沼でも、きれいな花を開かせるから、とのことです。 ならば、この写真集は、世界の各地で咲き誇る何輪もの蓮への扉なので…

218「死者に語らせない宗教から、死者と生者の対話の仲立ちへ」

「3・11以後この絶望の国で 死者の語りの地平から」(山形孝夫・西谷修、2014年、ぷねうま舎) 大津波のあとの被災地には、従来の仏教、キリスト教の手の届かない現実が横たわっていた、と山形さんは言います。 できることは何もなかったのです、ともに哭くこ…

217「レミゼを19世紀の絵と20世紀の解説で再読」

「『レ・ミゼラブル』百六景」(鹿島茂、2012年、文春文庫) 映画や舞台を観た人、子ども向けに書き直されたものを読んだ人はいても、全巻を読破した人は、あまりいないことでしょう。鹿島さんも、原書で通読した仏文学者は、「大菩薩峠」を読了した国文学者よ…