2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

712 「父と子のコンプレックス」 ・・・ 「銀河鉄道の父」(門井慶喜、2020年、講談社文庫)

誤読ノート712 「父と子のコンプレックス」 「銀河鉄道の父」(門井慶喜、2020年、講談社文庫) 宮沢賢治の父親を主人公にした小説です。賢治の誕生から死までの、父子の距離の伸び縮みが描かれています。それには、いろいろな側面があり、読者の対人関係に…

711 「地球環境破壊は、傷害や殺人である」 ・・・ 「パイプライン爆破法   燃える地球でいかに闘うか」(アンドレアス・マルム、2021年、月曜社)

物騒な書名だ。けれども、著者は「財物破壊はイエス。しかし、人間への暴力にはノー」(p.225)と明言している。 不必要にCO2を排出する金持ちの高級車を動けなくする、パイプラインに穴を開ける、そうした財物破壊によって、社会や政治がCO2による殺人的地球…

710 「2023年2月、日本語で読める最良の神学概論」 ・・・ 「21世紀のキリスト教入門 一つの教会の豊かな信仰」(フスト・ゴンサレス、教文館、2022年)

「『キリスト教』入門」とありますが、『キリスト教神学』の入門書、神学初学者向けテキスト、神学の土台にもなりうる一冊です。 「教会の信仰の大枠、言い換えれば、教会の一致の土台を示しながら、さらに、その中で多様性を受け止めようという姿勢をゴンサ…

709 「貧者のケアは神の愛の現れ、キリスト教の中心」 ・・・ 「古代から中世へ」(ピーター・ブラウン、2006年、山川出版社)

キリスト教に関わる部分だけを抜き出してみましょう。 「後期ローマ社会における司教の傑出した地位は、貧者の守護者としてのその役割からくるものでした。この「貧者への愛」こそ、キリスト教文献史料が司教に期待する美徳でした」(p.27)。 けれども、これ…

708 「山の奥にある大いなる希望」・・・「「小さきもの」の思想」(柳田国男著、柄谷行人編、文春学藝ライブラリー、2014)

柳田に興味があったわけではない。柄谷が自著で柳田に触れ、本書を編纂したと言うからだ。柄谷が柳田を引用する理由は、本書の「解題」における柄谷に言葉に現れている。 ぼくは、柳田にとくに関心はなかったが、30年くらい前に柳田の「山人」という言葉に触…