2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

521 「傷つきながらも、人に寄り添い続けたい方々に」・・・「精神科臨床の星影 安克昌、樽味伸、中井久夫、神田橋條治、宮沢賢治をめぐる時間」 (杉林稔、星和書店、2010年)

ぼくは牧師です。精神科医ではありません。しかし、「臨床」という共通点があります。医師ではなかった賢治の名もここに並んでいるように。臨床とは床に臥すような苦しみにある人のかたわらに臨むことでしょうか。 言葉、態度、まなざしといった人間関係によ…

520 「たとえ世界中が牢屋でも」・・・「ビール・ストリートの恋人たち」 (ジェイムズ・ボールドウィン著、川副智子訳、早川書房、2019年)

支配者は被支配者を獄に入れる。いや、支配することそのものが支配する相手を獄に入れることなのだ。黒人はすぐに獄にぶちこまれる。ストリートがすでに獄なのだ。 ボールドウィンは黒人であり同性愛者だ。それは、白人であり異性愛者であることや、日本人で…

519 「抑圧される者は、神に棄てられたのではなく、神がそこにいることを啓示している」・・・「誰にも言わないといったけれど 黒人神学と私」 (J. H. コーン著、榎本空訳、2020年、新教出版社)

聖書は、イエスは、誰にむかって、何を語っているのか。神学はそれを記述する想像作業であり、詩作である。コーンは言う、「神学は反理性的なのではなく、非理性的なのであって、理性的な議論を超越し、想像力でしか掴むことのできない現実の領域を指し示す…