2017-01-01から1年間の記事一覧

(78)「ついにこの目で見ました」

大学生のころ、初めて行った海外。着陸間近の飛行機の窓からハワイの土と緑を目にしたとき、「ああ、ついに外国を、この目で見たぞ」と感動したものでした。 12月15日のシネコンのスクリーン。スター・ウォーズ・エピソード8。待ちに待った大スペクタクルを…

405 「親は誰か。生涯の課題」  「馬と少年 ナルニア国物語3」(C・S・ルイス著、土屋京子訳、光文社古典新訳文庫、2017年)

貧しく横暴で乱暴な父親に虐待されていた少年。けれども、ある日、奴隷として売られる直前に、馬に誘われ、逃げ出します。 少年は、旅をしつつ、馬を駆ることを馬自身に教えられ、自分とはまったく違う境遇の少女と出会い、見たこともないような世界に触れ、…

404 「言葉と悲しみ。天の住民」  「詩集 見えない涙」(若松英輔著、亜紀書房、2017年)

若松英輔さんの批評やエッセイは、とても詩的です。リルケなど何人かの詩人の批評もしておられますから、いっそうそのような印象があります。 その若松さんがどのような詩を書かれるのでしょうか。この詩集は、ぼくには、意外にも、散文的に思えました。詩的…

(77)「花を咲かせるものは何」

花は美しく、花には愛が満ちています。つぼみが美しく、開いて美しい。育てる人に美しく、観る人びとに美しい。観て美しく、写真に撮って美しい。 花の種を蒔く人、球根や苗を植える人は、花を愛しています。花を愛するから、花を植え、花を育てるのです。花…

403 「文字を読み、目に見えない世界の根源へ」  「池田晶子 不滅の哲学」(若松英輔著、トランスビュー、2013年)

若松さんを真剣に読めば、あらゆる書物の読み方、世界の観方が変わることだろう。目に見えず、手で触れることのできない、世界の根源へと招かれて行くことだろう。 たとえば、聖書。じつに、さまざまな読み方がある。文字通りに読んだり、歴史的背景を考慮に…

73  「虐殺と略奪を徹底的に破壊しなさい」

殺すな 何があっても殺すな 少しでも殺すな 合法的に殺すな 殺さないことに どこまでも忠実であれ 盗むな 貧しい者たちから奪うな 生を奪うな 言葉を奪うな 合法的に吸い上げるな 盗まないことに 徹底的に忠実であれ 殺しを咎めず 略奪を促す 神々の場を 徹…

72  「主に腹従し主の戒めを熱愛するなら、あなたたちは祝福となる」

あなたのいのちは あなたが創ったものではない あなたのものではない 主が創り 主があなたに託したものだ 主は言われる 殺すな 盗むな 嘘をつくな もしあなたが 主にかたじけないと思い 主の戒めを熱愛し 主に腹従するなら あなたたちよりも大きく強く あな…

402 「もっとも苦しんでいる人びとの「普遍的な権利に基づいた普遍的な声」を反映する政治を望みます」

「ポピュリズムとは何か 民主主義の敵か、改革の希望か」(水島治郎著、中公新書、2016年) 安倍内閣は憲法改正を国会で決議し、国民投票に持ち込み、投票者の過半数の支持を得るかも知れません。そうすれば、手続き上は問題なしに、憲法が改正されることに…

401 「原発はバベルの塔だった」   「日本で神学する: 栗林輝夫セレクション1」(栗林輝夫 (著),‎ 大宮有博 (編集),‎ 西原廉太 (編集)、新教出版社、2017年)

「〇〇の神学」。解放の神学、民衆の神学、フェミニスト神学、エコロジー神学・・・。このような「属格の神学」は普遍的な神学ではない、という言い方を聞いたことがあります。 けれども、ことは反対で、神学は属格になって初めて普遍性を帯びるのではないで…

71  「河を越えれば」

あなたたちは今日 この河を越える そこは正義と恵みが流れる土地 だから、あなたたちは 殺してはならない 盗んではならない 不実であってはならない 隣人が今日 この河を越えてくる 正義と恵みが流れる土地を目指して だから、あなたたちは 殺してはならない…

(76)「自分へのこだわりを手放し、まわりの人や神に心を向けてみましょう」

部活があったため、中学最初の二年間は、子どもたちは塾に行かせませんでした。その代わりに、通信教育の添削教材をやらせていました。けれども、成績があまり良くないので、教科書に即した市販の問題集も買い与えました。三年生になって、はじめて、塾に行…

400 「話し相手。旅の友。イエスは奇跡ばかりが取り柄じゃない」  「キリスト教は役に立つか」(来住英俊、新潮選書、2017年)

聖書を開くと、イエスは、出会う人の難病を癒したり、目を見えるようにしたり、耳を聞こえるようにしたりしています。そんなことはあるはずがない、だから、キリスト教は信じられないと言う人がいます。そういう人に、ぼくは、いや、本当にあったのですよ、…

399 「大空ときんかくし」   「石垣りん詩集」(石垣りん著、伊藤比呂美編、岩波文庫、2015年)

詩人は天からの声を書きとめる、と聞いたことがあります。ならば、詩人は天を仰いでいるのかも知れません。石垣りんさんもそのようです。「私は私の持つ一切をなげうって 大空に手をのべる これが私の意志、これが私の願いのすべて!」 けれども、「家の上に…

398 「ライオンは死して」  「ライオンと魔女と衣装だんす」(C・S・ルイス著、土屋京子訳、光文社古典新訳文庫)

ライオンの名はアスラン。森の王にして、大海のかなたに住む大帝の子息。 「アスラン来たれば 悪が滅び アスラン吼ゆれば 悲しみ癒える 牙の一閃 冬を葬り たてがみふるえば 春めぐりくる」 けれども、魔女にとらわれたエドモンドを救うために、アスランは吼…

70  「これらの主の義を、ぼくらはすべて見てきた」

主は闇に光を創ってくださった 混沌に平和をもたらしてくださった 人にいのちを吹き込んでくださった 皮の衣を着せてくださった カインに撃たれないしるしを付けられた ノアと家族と生物に舟を浮かべてくださった 大水を退かせてくださった アブラハムを狭い…

(75)「死後の世界は言葉では言い表せないけれども、ただひとつだけたしかなことがあります」

もし死後の世界があるなら、そこはどのようなところでしょうか。今わたしたちがいる世界と同じように、時間があり、空間があるのでしょうか。今と同じように言葉や意識をひとりひとりが持っているのでしょうか。 先に旅立ったおばあちゃんは92歳の姿のままそ…

69   「だから、あなたも、寄留者を虐げてはならない」

主を畏れよ 心底から愛し 全身で仕えよ 天は主のもの 地も主のもの その主があなたに 心を寄せ こよなく愛し あなたは今日も 生かされている 心の鎧を脱ぎ捨てよ かたくなになるな 主は、人を差別せず 見返りを求めず 孤児と寡婦を一番に守り 寄留者をもてな…

68  「主よ、どうか、滅びゆく民をお救いください」

主なる神よ、あなたは 虐げられる民を いくどもいくども 解き放って来られました けれども、われらは今 滅びの道を再び歩み 止めることができません 主よ、どうか 滅びゆく民をお救いください あなたとともに歩んできた われらの天上の先達を想い起こし われ…

397 「『初めに言があった』とは、まことだった」  「言葉の贈り物」(若松英輔著、亜紀書房、2016年)

「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」。新約聖書のヨハネによる福音書の冒頭のこの言葉を、本著はみごとに伝えています。しかも、読みやすいエッセイで。けれども、洒脱でも軽妙でもなく、じつに深々としているのです。大樹の根のよう…

(74)「規則ではなく、神の愛こそが、人と人を大切に結び合わせます」

「勉強したか」と子どもたちに聞くと「したよ」と答えますが、教科書を眺めているだけでは、じつは勉強をしたことにはなりません。英語の綴りや基本用語など覚えるべきものは覚える、数学なら学んだ公式や定理を利用して問題が解けるようになる、そして、そ…

67  「憲法は、偶像を砕いて塵とする」

神は火の中から語った その言葉を石の板に指で刻んだ けれども、民は堕落して 十戒を憎み、神を棄てた 彼らは、偶像を愛した 権力と武力と暴力と金力と 原子力を神とした 主よ、どうしたらよいでしょうか めらめらと音がする ふりかえると 山が燃えている 十…

396 「礼拝は会衆だけでなく世界全体に愛を伝える神の働き」  「現代における宣教と礼拝」(デーヴィス著、岸本羊一訳、日本基督教団出版局、1968年)

教会の礼拝は、内向き、つまり、すでに教会員になった人にだけ向けられていないでしょうか。けれども、本書は、礼拝とは、「教会と神」の間ではなく、「この世と神」との間のことがらだと言います。あるいは、礼拝は、神が教会に来ている人のみならず、世界…

395 「会うと逢う。その違いと深みを知りました」  「言葉の羅針盤」(若松英輔著、亜紀書房、2017年)

雨降る土曜の夜でした。「お届けしたいものがあります。今からお訪ねします」。こんな時間に何だろうと思っていたら、「さきほどまで若松さんの講演会があって、そこで買ってきました」と言って渡してくださったのが、この本でした。 大事なことは、思いがけ…

66  「主こそが正義だから、不正義を追い払われる」

聞け、いのちを求める民よ 死に抗う民よ あなたたちは今日 大きな河をわたり 暴力を倒そうとしている 彼らは巨大で強力だ 誰が立ち向かえる と思っただろうか しかし、今日、 あなたたちの神は 暴力と不正義と虚偽を 焼き尽くす火となり あなたたちに先立っ…

394 「哲学者の名前や難しい用語は出てきませんが、哲学の基本にある問い(=不思議)や考えが伝わってきます」  「14歳の君へ」(池田晶子著、毎日新聞社、2006年)

うちの14歳の子どもたちは興味を示さなかったけれども、56歳のぼくは、とてもおもしろく読めました。あたらしい考え方に、また、考えるということの基本に触れることができました。 たとえば「個性」の章。本当の自分とは、こうであるとか、ああであるとか示…

(73)「イエスの言葉は、情報をもたらす以上に、人に働きかけます」

「大丈夫だよ! 明日の試合はきっと勝てるよ!」 試合の結果はどうであれ、この言葉は「ウソ」ではないでしょう。なぜなら、これは、試合結果のニュースでもなければ、試合前の予知でもないからです。そうではなくて、激励や鼓舞や慰撫の言葉なのです。 「あ…

393 「わかりにくさの中にある、被災者ひとりひとりの本当の声」   「リスクと生きる、死者と生きる」(石戸諭著、亜紀書房、2017年)

聞きやすいように話す。読みやすいように書く。ぼく自身、牧師として、教師として、わかりやすい言葉を心掛けてきた。 人の言葉もわかりやすく理解しようとしてきた。けれども、何を言っているのかわからない人の話を聞く時は、わかる部分だけを聞こうとして…

(72)  「実績や責任を問うことなく、今を生きるのに必要な糧を、神さまはすべての人に与えようとしています」

Aさんは、家族もなければお金もなく、高齢のうえに病気を抱えていて、働けません。働ける時は働いていたのですが、毎日の生活費を確保するのに精一杯で、老後の蓄えなどはできませんでした。けれども、この人が社会福祉制度を利用しようとするとき、「いや、…

65  「主を想い起こしなさい 憲法を想い起こしなさい」

わたしが今日与える憲法を破ったり わたし自身を忘れたりしないように 注意しなさい 満腹になり、住居を持ち、財産が増え おごりたかぶり、自分のことだけになり 貧しい人びと、虐げられている人びと 若者、高齢者、外国人、沖縄の人びと、 障がいを持つ人び…

(71)「もっとも大切なことは、自分が生きているこの世界と、この時代と、そして、自分の人生への信頼です」

ある親が子どものことで先輩に相談に行きました。「わたしは、あの子を小さいころから塾に行かせました。勉強ばかりでは駄目だと思い、スイミングにも通わせました。それだけでも足りないと思い、本もたくさん揃えました。早くからパソコンにも親しませまし…