2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

625   「人間による人間の支配には従わない、神自身も支配者ではない」・・・「アナキズムとキリスト教」(ジャック・エリュール、新教出版社、2021年)

いかなる権力、支配にも従わない。聖書はそう言っている。初期のキリスト教もそうだった。この本が述べていることは、こういうことではないでしょうか。 では、本書が言うアナキズムとはどのようなものでしょうか。 「無秩序という通常の意味とは異なる an-a…

624   「人間は他者を悪人と裁く悪人。悪人は悪人を裁くべからず。」 ・・・「終末の起源 二つの系譜 創造論と終末論」(上村静、ぷねうま舎、2021年)

この本は終末論を批判しています。どのような点が批判されているのでしょうか。 わたしは、この本を読むまでは、終末論について肯定的な印象を漠然と抱いていました。それは、わたしたちが生きている社会や歴史には暴力、権力を持つ者たちによる支配、抑圧、…

623  「遠藤生涯の仕事は『キリスト教自らの棄教』、本書はその出発地」・・・ 「白い人・黄色い人」(遠藤周作、新潮文庫、1960年)

昨年、「深い河」「女の一生 一部」「女の一生 二部」と読み、感銘を受け、遠藤周作を読み返さなければならないと思い、本作を読んでみました。 しかし、去年読んだ三冊や、ずっと以前に読んだ「沈黙」や「侍」と、本作とでは、読後感がだいぶ違いました。一…

622  「神学とは魔法ではなく、深みを想うこと」・・・「危機の神学 「無関心というパンデミック」を超えて」(若松英輔、山本芳久、文春新書、2021年)

神学は今回のパンデミックを前にしてどのような考察をするのでしょうか。むろん、どういう対策、政策をとるべきかを考えるのではありませんが、かといって、「これは神から人間への罰である」というような思考レベル以前の発言をするのでもありません。 「私…

621   「死んでいくことは生きることそのもの」・・・「死を友として生きる」(ヘンリ・ナウエン、日本キリスト教団出版局、2021年)

もうじき六十歳になるというころから、残りの人生は、死への滑走時間、死を受け入れる準備期間、とわたしは考えるようになりました。ひとつは、年齢そのものがそう思わせるのですが、もうひとつは、それまでの自分の人生が否定されるような経験、ああこれは…

620   「笑いと宗教の共通点」・・・「癒しとしての笑い」(ピーター・バーガー、新曜社、1999年)

著者は、神学にも詳しい社会学者です。笑いは社会学の重要なテーマのひとつだと思われますが、バーガーの著述そのもののいたるところにも、ユーモアが散りばめられています。 「自分たちの理論をひどく重大なものと考える性癖では、哲学者は神学者につぐもの…

619   「宗教や信仰の違いを乗り越えるにはどうしたらよいか」・・・「霊性の宗教―パウル・ティリッヒ晩年の思想」(石浜弘道、北樹出版、2010年)

世界にはいくつもの宗教がありますが、残念ながら、それらの中には、自分たちだけが正しい、他は間違っている、という攻撃性を持っているものもあります。本書はそれを乗り越えようとする試みのひとつであると言えるでしょう。それは、同時に、宗教を問わず…

618   「毎日がクリスマス、毎日の仕事」 ・・・「クリスマス・キャロル」(チャールズ・ディケンズ著、井原慶一郎訳、春風社、2015年)

訳者解説では、「「子どもを救え!」というのがこの作品の核にあるメッセージ」(p.216)と述べられています。執筆当時のロンドンには三万人のストリート・チルドレンがいたそうです。そして、この本の大きな目的は「貧困階級の子どもたちの擁護をイギリス国民…

617   「宗教を別の言葉で言い変える、誰にでもある経験で言い変える」 ・・・「人と思想 135 ティリッヒ」(大島末男、清水書院、2014年)

このシリーズは「概説とその中心となる思想を、わかりやすく・・・平易な記述・・・学生・生徒の参考読物として・・・」出されていることになっていて、たしかに、わかりやすいものもあったのですが、この本はひじょうに難しかったです。 哲学用語、哲学の言…