2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

107 「その人をひとりにさせまいとする者たち、それを家族と呼ぶ」

「遺体 震災、津波の果てに」(石井光太、2011年、新潮社) これは、震災、津波で遺体となった人々を、ひとりにはさせまいとする、家族、住民、釜石市民の物語。 家族のもとに帰そう。この言葉が主旋律として何度も繰り返される。ならば、家族に見いだされな…

106 「イエス物語が伝える、抵抗と美」

「名画で読む新約聖書」(山形孝夫=著、山形美加=絵画解説、2011年、PHP) この世界で起こるさまざまなこと(風、水、家族の生と死、言葉・・・・)についての深い宗教的感性と思索を備えた(・・・これは神さまに願えば何でも大丈夫という「信心深さ」と…

105 「何もわからないけど、ふたつだけわかっていること」

「アメージング・グレース 光と希望を! 絶望から救われた奴隷商人の物語」(中澤幸夫、2013年、女子パウロ会) 「アメージング・グレース」として知られる讃美歌の作詞者、ニュートンの生涯。 前半は、少年時代から、軍艦、奴隷貿易船で過ごす青年時代まで…

104 「この題名により、社会を変えることをもう一度考える人が増える」

「社会を変えるには」(小熊英二著、講談社現代新書、2012年) 小熊さんと二歳しか変わらないぼくは、1960年から80年まで、社会の出来事、政治、新聞、ニュースにはほとんど興味を持たずに過ごしました。しかし、本書により、生まれてから二十年間の社会と政…

103 「死者とは、存在が取り消された者のことではない」

「黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと」(山形孝夫著、岩波書店、2013年) この本では、死者以外にも、病者、女性、ユダヤ人、イスラムの人々、などについて語られています。 息子・光さんの「僕はもうダメだ。二〇年も生きちゃ困る」という言葉に何と…

102 「井上ひさしさんの惚れ抜いた本」

「井上ひさしの読書眼鏡」(井上ひさし著、中央公論新社、2011年) 誰もが名前を知りながら読んだと言う人はほとんどいない大江健三郎の小説「「自分の木」の下で」「取り替え子(チェンジング)」「憂い顔の童子」。 「研究社シェイクスピア辞典」「日本史…