2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

733 「金の牛を破壊したモーセ並みのパンチ力」 ・・・ 「メタフィジカルパンチ 形而上より愛を込めて」(池田晶子、文藝春秋、1996年)

「実際にこういうことが起こった」「証拠がある」「この宗教は世界の真実を論理的に解き明かしている」といった言葉で、自分の属する宗教は真正である、と主張しようとする人がいるが、これは矛盾している。 信仰とは論理的帰結ではなく、文字通り(「文字通…

732 「救いの方程式、公式ではなく、個人の救い」 ・・・ 「治療文化論: 精神医学的再構築の試み」(中井久夫、岩波現代文庫、2001年)

科学はいつの時代にもどの場所でもあてはまる法則や答えを示していると思われている。たとえば、1+1は、いつでも、どこでも、2である。水素と酸素を適切な方法や環境で化合すれば水が生成する。 けれども、医学はかならずしもそうではない。ガンなどに顕著…

731 「相手を否定せず教え諭さないための教義学」 ・・・ 「教義学とは何か」(雨宮栄一、村上伸編、日本基督教団出版局、1987年)

教義学には二つの側面があるのではないか。 ひとつは、神とは何か、創造、キリスト、聖霊、救済、教会、終末とは何か、探求し、表現する学である。聖書やキリスト教会の信仰が、あるいは、先人のそのような探求、表現が、その資源になる。 もうひとつは、そ…

730 「これはちょっとすてきな精神現象」・・・「100分で名著 ヘーゲル『精神現象学』 2023年5月」(斎藤幸平、NHK出版、2023年)

さまざまな考えの人間たちが、いかにして合意を形成しうるか、あるいは、すべきか。「精神現象学」とは、じつは、そういうことを考えた本だった、と著者は言います。 つまり、多様な思考の人間たちが、歴史の中では結果的には相対的であろうとも、その時にお…

729 「韓国現代詩と茨木のり子の合作」・・・ 「韓国現代詩選〈新版〉」(茨木のり子訳編、2022年、亜紀書房)

1980年代の韓国の詩から、茨木のり子さんが選び、翻訳した詩集。 若松英輔さんの解説は「目に見えないもの」の観点から。斎藤真理子さんは茨木さんのこの詩集での翻訳の特色を説いている。 「ちかちかかがやく/オリオンが/見えたのだった/眼をつむっても …

728 「聖書は石ではなくパンなのだ」・・・ 「神を考える―現代神学入門」(D・ゼレ、1996年、新教出版社)

原著は1990年。 訳者によれば、ゼレは「著者の論旨は明快である。解放の神学の視点から、これらのキリスト教の中心的テーマ、基本概念を解き明かす」(p.298)。 ぼくが「解放の神学」と出会ったのが1980年代前半。 「解放の神学」は、第三世界(富める第一世…

727 「これを読むと、観る映画を探す苦労が激減」 ・・・ 「キリスト教で読み説く世界の映画(関西学院大学キリスト教と文化研究センター編、2023年、キリスト新聞社)

U-NEXT、Amazon Prime、Disney+に加入しているので、何千もの映画が毎月の定額料金で、あるいは、プラス何百円かで、ぼくは観られるのですが、何年か経った最近、観たいもの、おもしろいものを見つけるのに苦労するようになってきました。 そこで、この本を…