644 「キングの愛は神の無償の愛か」・・・ 「キング牧師: 人種の平等と人間愛を求めて」 (辻内鏡人、中條献、岩波ジュニア新書、1993)

 ヒップホップ世代はキング牧師公民権運動世代とのギャップを感じている、と聞く。けれども、変わらないことがある。黒人が白人警官に棒で殴られ地面に抑えつけられ、射撃され、殺されるということだ。

 しかし、それだけではない。抑圧や希望の表現の違いはあれ、変わらない思想もあるのではなかろうか。

 

 「戦闘性と冷静さという、相反するふたつのことを聴衆に訴えるにはどうすればいいのか」(p.54)。

 差別に抗って、闘うこと、しかも、冷静に闘うことは、どうすればできるのだろうか。

 

 「わたしゃ自分のために歩いているんじゃないのよ。わたしの子どもと孫のために歩いているのよ」(p.59)。

 

 この差別は、自分の世代では終わらせることはできないかもしれない。しかし、次の世代を想い、歩き続けることはできる。

 

 「キングは、共産主義には「絶対賛成できない」と書きながらも、資本主義社会に存在する不公平や不公正を根絶しようと考える点では、共産主義キリスト教と同じだと評価した」(p.73)。

 

 キリスト教は「資本主義社会に存在する不公平や不公正を根絶しようと考える」べきだという指摘がここにはあるのではなかろうか。

 

「多くの白人は、自由とは、自分たちが黒人に授けたものだと思い込んでいます。そんな気持ちで、水を少しずつたれ流すように、市民権も授けてやろうという、彼らの傲慢さが、黒人たちを怒らせているのです」(p.122)。

 

 この傲慢さは、今の白人にも、わたしたちにも引き継がれています。

 

 「キングによれば、黒人ゲットーは『経済的な搾取』の結果として生じた『国内植民地』でした。『搾取』とは、具体的には、教育制度の不備、差別的な住宅事情、熟練労働からの黒人の閉めだしなどで、これによって利益を得る人びとがいるのです」(p.153)。

 

 「国内植民地」は、日本にもいくつもあるのではないでしょうか。

 

 「かねがね彼は、暴力、貧困、人種主義という三つの悪を批判していました」(p.173)。

 

 暴力、貧困、人種主義、搾取、抑圧、能力主義、有名主義、性差別、コネ差別・・・

 

 「彼はキリスト教でいう人間愛(アガペ)を説きつづけたのです」(p.200)。

 

 ここで、人間愛に「アガペ」というルビがふってあるのは、キングの伝記を書いた日本語使用者が、agapeという英語に「人間愛」という意味がある、と考えたからでしょうか。

 この直前に、キングの葬儀でのアバナシー牧師の説教が引用されています。

 

 「きみはぼくたちによくこう言ったものだ。『敵を愛しなさい。あなたを呪う者を祝福しなさい…』マーティン・・・きみはみんなを愛した」(p.199)。

 

 キングの「みんな」への愛を、著者は「人間愛」と呼び、それに、通常は「神の無償の愛」と理解される「アガペ」というルビをつけたのでしょうか。

 

 

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%89%A7%E5%B8%AB%E2%80%95%E4%BA%BA%E7%A8%AE%E3%81%AE%E5%B9%B3%E7%AD%89%E3%81%A8%E4%BA%BA%E9%96%93%E6%84%9B%E3%82%92%E6%B1%82%E3%82%81%E3%81%A6-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%8B%E3%82%A2%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E8%BE%BB%E5%86%85-%E9%8F%A1%E4%BA%BA/dp/4005002218/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=3AVA81Z5Q03UH&keywords=%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%89%A7%E5%B8%AB&qid=1650863304&sprefix=%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%89%A7%E5%B8%AB%2Caps%2C175&sr=8-1