2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

85 「キリスト教的な考えの、近代を忍ぶ姿」

「やっぱりふしぎなキリスト教」(大澤真幸他、左右社、2012年) 何がフシギなのでしょうか。キリスト教など重要視していないように見える近代社会にこそ、じつは、非常にキリスト教的なものがある。だからキリスト教はフシギだ、と大澤さんは言います。 こ…

84 「決闘対話へと導いてくれる者」

「ツナグ」(辻村美月、新潮文庫、2012年) 死んだ人をホテルの一室に呼び出して、再会をリクエストした生者とひきあわせる。これがツナグの仕事。 しかし、読み進めば、これが推理あるいはオカルト小説でないことは、すぐにあきらかになります。 では、死者…

83 「わかっていない、ということをわかる」

「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」(田崎晴明、朝日出版社、2012年) 原子力は現代の「荒ぶる神」であるから、ヨーロッパの原発は神殿に模されている。内田樹さんがこのように述べています。 「荒ぶる神」の「荒ぶる」とは、とき…

82 「絶望的なまでに、相手のことを考えない男ども。だけど、あえて変化の兆しを求めるとしたら」

「55歳からのハローライフ」(村上龍、冬幻社、2012年) 五十代以上の男は、いや、おそらく、若い男たちも、妻のことなど、まともに考えない。 「退職後はいつでも 妻と二人で 悠々自適な旅を」などと思い立ち、妻に相談なく、一千万円のキャンピングカーを…