2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

654  「神を感知することと出会うことは違う」・・・ 「見えない神を信ずる 月本昭男講演集」(月本昭男、日本キリスト教団出版局、2022年)

「土地は神に属するという思想の背景にはどのような発想が隠れているのでしょうか。それは古代イスラエルの人たちが自分たちの先祖を羊飼いと考えたことと無関係ではなかろう、と私は思います」(p.56)。 土地は神のものであるという旧約聖書の思想には大きな…

653「海をもらう とは」・・・ 「海をあげる」(上間陽子、2020年、筑摩書房)

沖縄が好きだ、という観光客は少なくないだろう。沖縄の海が好きだ、と。沖縄の人はやさしいと。では、米軍基地に抵抗する沖縄の人は好きなのだろうか。つぎのような沖縄の日常生活は好きなのだろうか。 「飛行機が接近すると家全体がガタガタ震えるから、娘…

652   「世界という必然、神に委ねて生きる自由」・・・「スピノザ『エチカ』 2018年12月 (100分 de 名著)」(國分功一郎、2018年、NHK出版)

本書によれば「スピノザは神を自然と同一視しました」(p.23)。けれども、この場合の自然とは「世界全体」のことです。 「神は自然であるだけでなく、「実体 substantia」とも呼ばれます・・・実体とは実際に存在しているもののことです。スピノザが神は実体…

651「お坊さんと牧師さんの共通点、相違点」・・・「相互救済物語」(武田定光、2021年、因速寺出版)

東京都江東区にある真宗大谷派の因速寺の武田住職の講演を起こしたものです。 以前に読んだ本では、キリスト教との共通点を感じ、また、一宗教にこだわらないお考えにひじょうに共鳴しました。 今回は、これらに加えて、キリスト教との相違点も学びました。 …

650 「天を掘る」・・・「新版 小林秀雄 越知保夫全作品」(越知保夫 (著)、若松英輔 (編集)、2016年、慶応義塾大学出版会)

650 「天を掘る」 「新版 小林秀雄 越知保夫全作品」(越知保夫 (著)、若松英輔 (編集)、2016年、慶応義塾大学出版会) 本書を編集した若松英輔さんがこう書いています。「越知が論じる小林秀雄は批評家であるととともに一個の聖性の探求者である」(p.527)。…

「差別に基づく翻訳の若干の是正」・・・ 「ここが変わった! 「聖書協会共同訳」新約編」(日本キリスト教団出版局、2021年)

マタイ27:25は新共同訳では「その血の責任は、我々と子孫にある」となっています。この訳だと、「イエスを拒否して十字架で殺した責任はユダヤ人に子々孫々受け継がれているとする考え」(p.21)を生み、現代まで続く「ユダヤ人迫害の根拠」(同)となってしまい…

648  「人間にある有限性と無限性の葛藤を乗り越えさせる力」・・・ 「ティリッヒ組織神学の構造」(茂洋、1971年、新教出版社)

キリスト教用語に頼らず、もっと一般的な言葉づかいで、キリスト教の神を言い表すことに関心があり、その流れで、半年ほど前から、ティリッヒに立ち寄っている。といっても、ティリッヒについての本を数冊読んだだけで、ティリッヒ自身の著作は、三冊しか読…