2015-01-01から1年間の記事一覧
「若者と生きる教会 伝道・教会教育・信仰継承」(大嶋重徳、教文館、2015年)著者、二回の講演がこのように出版されるのは、内容が良いというだけでなく、教会やキリスト教出版界がこのテーマの本や議論、方法を切実に求めていることを示しているのではない…
「悲しみの秘義」(若松英輔、ナナロク社、2015年)悲しみには長居をしたくない。悲しみには留まりたくない。悲しみに意味などあるのか。若松さんは、悲しみの秘められた意義を書く。「履歴書を書き進めているうちに私たちは、どの項目にも書き得ない出来事…
映画「母と暮らせば」(山田洋次監督)死ぬのは、痛いし、苦しいし、悲しいし、寂しいし、悔しいし、惜しいし、血が流れる。死なれるのも、痛いし、苦しいし、悲しいし、寂しいし、悔しいし、惜しいし、涙が湧き出る。死は軽くない。扉を開けて隣の部屋に行…
「必ず書ける「3つが基本」の文章術」(近藤勝重、幻冬舎、2015年)良質の文章を書きたい。仕事やFacebookへの投稿。百から数千字の文章は毎日のように書いているが、やっつけ仕事。書きたい、けれども、書けない、思いつかない。だから、書くことより急いで…
暴君の力は強大です 倒すすべがありません 恐れるな 蛇をつかめ 手を伸ばせ 暴虐者の尾をつかめ 人びとは聞いてくれません 信用してくれません 勇気を出せ 手を伸ばせ 負傷者に肩を貸せ 病者に手を当てろ 暴君も聞いてくれません 民の叫びにも耳を傾けません…
助けてください 彼らは強いるのです 鞭で打つのです 足で蹴るのです 踏みつけるのです 唾を吐くのです ここから救い出してください ああ、声が聞こえる 地から叫び声が聞こえる 助けを求めている 聞かないでおられようか そのままにしておけようか 心の真ん…
なんとひどい仕事を強いられているのか わが同胞たちは ああ、あの男は、わが同胞を 鞭で打った 足で蹴った 踏みつけた 唾を吐いた 赦せない わが同胞に何をするんだ おまえは赦せない 仲間をこんな目に遭わせて 絶対に赦せない ああ、今度は 同胞同士のけん…
「牧師の読み解く般若心経」(大和昌平、YOBEL、2015年)自覚的な仏教徒で専門的な勉強もなさった方が、ここ何年か蒲田教会の礼拝や神学書の読書会にお越しくださり、ぼくの拙いお話に耳を傾けてくださっておられます。その方が、とても良いですよとご紹介く…
「松本亮と『英語で考える』 ラジオ英語会話と戦後民主主義」(武市一成、彩流社、2015年)松本亮と言えば、英会話の有名な先生だ、と思う人が少なくないでしょう。じじつ、NHKラジオの「英語会話」の講師を1951年から二十年以上務め、多くの聴取者を得てい…
おまえらが憎い おまえらが恐い だが、おれの王座を脅かそうとしても無駄だ おまえらに命じる 男の子が生れたら みな、ナイル川に放り込め なんてかわいい子だ 川に放り込むことなんてできない ずっとここに隠しておこう 日に日に泣き声が大きくなる もはや…
「叡智の詩学 小林秀雄と井筒俊彦」(若松英輔、慶應大学出版会、2015年)It rains. ふつうは「雨が降る」と訳すが、英文では主語はrainではない。「それが雨を降らせる」。それとは何か。神が雨を降らせる。いや、自動詞ならば、神が雨する、神が雨となる、…
どうしてここに こんなやつらが こんなにうようよしているんだ 増えるばかりじゃないか おそろしいことだ やつらは集まって何をしているんだ 何かよからぬことをたくらんでいるんじゃないか おそろしいやつらだ やつらをこれ以上のさばらせてはならない やつ…
「イエスという人の物語」(ホセ イグナシオ ロペス ビヒル、 マリア ロペス ビヒル著、 祐川郁生訳、新教出版社、2014年)1150頁、144章。発行が去年のクリスマスの日付だから、少しずつ、一年かけて読んだことになります。マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネの…
どうですか こちらの生活にはもう慣れましたか ありがとうございます だいじょうぶです 何でもわからないことがあったら 遠慮なく訊いてください ありがとうございます たすかります ああ、そうだ 今度良かったらご飯でも いっしょにいかがですか ありがとう…
「深い淵からふたたび引き上げてくださった」 なんだ、こいつは なまいきだな だれだ、こいつは こんなやつ、知らないぞ こんな名前、聞いたこともない 勝手にしゃべりやがって えらそうなこと、言いやがって 雑魚のくせして その他大勢のくせして ふざけや…
あいつらだけは絶対に赦せない おれたちを差し置いて あんな汚いやり方で 自分たちだけ特権を 手に入れやがって あいつらだけは生かしておけない 大変です あなたたちはこのままここにいると 殺されてしまいます 遠くに逃げなさい 自分たちのしていることに …
おまえの持っているものは どうやって手に入れたのか すべてはあなたが 与えてくださいました そのすべてを わたしに返すことができるか はい、あなたはすべてをくださいました わたしはすべてをお返しします わたしはすべてをおささげします では、おまえの…
「遠野物語」の名を知ったのは、むかし、ぼくが愛読する作家、井上ひさしさんの「新釈・遠野物語」を通してです。井上さんの「新釈」は「遠野物語」への、いわばオマージュ(※オマージュ(仏: hommage)は、芸術や文学においては、尊敬する作家や作品に影響…
感情的になるとは、たとえば、内側から湧き上がる衝動をまったく抑えることなく、それに任せて、大声を出したり、攻撃の言葉をぶつけたり、物をこわしたりすることでしょう。これは、自他を激しく傷つけ、生活や仕事に大きな影響をもたらすことがありますか…
なにもかもおまえが悪いんだ おまえがここにいるからいけないんだ おまえのようなものが 何を偉そうにしているんだ さあ、ここから出て行け もう逃げるしかない でも、どこに行けばよいのか この荒れ野はどこまでつづくのか ああ、あそこに泉が ああ、あそこ…
「白い鹿」(版画:ヨゼフ・ドミヤン、詩:押田成人、日本キリスト教団出版局、2015年)はじめて読んだとき、その版画も、墨で書かれた詩も、理解不可能でした。意味あるもの、はっきりしたものとして、頭に入って来ないのです。できることは、ただページを…
「ふくしまノート2」(井上きみどり、TAKE SHOBO、2015年) 原発事故以来、福島の人びとは放射能汚染問題をどのように考え、取り組んできたのでしょうか。著者はそれを丁寧に取材し、十編のマンガで伝えています。 食品や土などの放射能を自発的に測定してい…
「ふくしまノート1」(井上きみどり、TAKE SHOBO、2013年)放射能から家族を守ろうと会津に避難している方々のお話しをうかがったことがあります。また、強制避難区域に残した家や土地に帰れる日を待ちつづけ、線量の低下に希望を抱きつつも、はたして大丈…
「クローディアの秘密」(E. L. カニグズバーグ、1975年、岩波少年文庫)良質な児童書は大人にとっても読みごたえがあります。子どもたちを成長させる栄養は、おとなの心も育んでくれます。「チームになったというのは、いい争いがやんだという意味ではあり…
「ダイヤモンドより平和がほしい」(後藤健二、2005年、汐文社) アフリカ、内戦のシエラレオネ。兵士らは家を襲い、両親を殺し、子どもたちをさらい、あらたな兵士に仕立てます。少年兵士らは、大人の兵士に教えられるままに村や家を襲い、人びとの手足を切…
なんて歴史なんだ なんて世の中なんだ あんなに叫んだのに あんなに訴えたのに なんて人生なんだ なんて生涯なんだ こんな年になってしまった こんなざまで もう終わってしまうんだ あなたを祝福しよう あなたに恵みを与えよう もう何年も残されていないのに…
なんてひどい王だ なんてでたらめな連中だ 愛も知恵もなにひとつない あるのはただ劣情だけ ぼくたちの言うことは すべて斥ける 勝手奇妙なことを並べ立て すべてを決める 自分はずるくなどないとにやつく 正当なことだとうそぶく 多くの者が賛成しているな…
「みんな、神様をつれてやってきた」(宮嶋望、2008年、地湧社) 宮嶋さんは世界有数のチーズを創り出した共働者たちのひとり。新得共働学舎代表。「しんとく」と読みます。地図で見ると北海道の真ん中。富良野の近くと言えば近くです。 自由学園で過ごした…
静かだったその島が 四十日四十夜 大雨に見舞われた 地は水で覆われた 水嵩は増し続け 丘の頂をも呑み込んだ 鳥も家畜も獣も虫も人も ことごとく息絶えた ただ箱舟だけが 海原に漂っていた 百五十日経っても 水は撤退しない と、小さな風が吹いた 風は日に日…
「魔女ジェニファとわたし」(E. L. カニグズバーグ、1989年、岩波少年文庫) 十才のエリザベスは、ハロウィンに出会ったジェニファに少しずつ魅了され、魔女見習いになります。そして、過ごした六か月の日々。 このお話しにはどんなメッセージがあるのでし…