2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

513 「死者からの最良の贈り物」・・・「詩集 愛について」 (若松英輔著、2020年、亜紀書房)

七、八年前でしょうか。初めて読んだ若松さんの本に、「死者」という言葉がありました。ぼくは、それは、「他者」のことだと思いました。「他人」ではありません。深い愛を感じつつも、自分の中に取り込んで自分の良いように決めつけてしまわず、むしろ、自…

512 「死者と話せば、前に進める」・・・「『井上ひさし』を読む 人生を肯定するまなざし」 (小森陽一/成田龍一編著、2020年、集英社)

井上ひさしさんは死んだので、戯曲や小説はもう出ないけれども、本書のような出版のおかげで、文字通り「『井上ひさし』を読む」ことが続けられます。 しかも、小森陽一、大江健三郎、辻井喬、平田オリザ、ノーマ・フィールド、そして、井上ひさし自身、とい…

511 「ひとりぼっちでないことで、つまり、社会で、心はケアされる」 ・・・  「新増補版 心の傷を癒すということ: 大災害と心のケア」 (安克昌、2020年、作品社)

「世界は心的外傷に満ちている。“心の傷を癒すということ”は、精神医学や心理学に任せてすむことではない。それは社会のあり方として、今を生きる私たち全員に問われていることなのである」(p.258)。 心に傷害を負った三十年前、ぼくは、一方では、自分の心…

510 「定住生活に非定住の自由と愛を回復させるには、一緒にご飯を」 ・・・   「福音家族」 (晴佐久昌英、オリエンス宗教研究所、2020年)  

イエスは、血縁に関係なく、人びととともに旅をしたり、食事をしたりしていました。晴佐久神父の言う「福音家族」も、血縁に関係なく、ともに食事をする共同体です。そこには、イエスから受け継いだ「無期限のつながり」「無償の分かち合い」「無条件の助け…

509 「聖書の登場者を継ぐ詩人」  ・・・ 「新編 志樹逸馬詩集」 (志樹逸馬著、若松英輔編、亜紀書房、2020年)

詩人はキリスト者でした。 「もう先に来て 祈っている人がある わたしもすわって 聖書を開く」(「教会への道」、p.159) 詩人は、野の花に神の営みを見たイエスの弟子でした。 「庭さきの花は 天と地をつなぐ 自然の微笑」(「花」、p.169) 詩人は、イエス…