2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

609    「目に見えないものを、ともに見る」・・・ 「神秘の夜の旅 越知保夫とその時代 増補新版」(若松英輔、亜紀書房、2021年)

吉満義彦、内村鑑三、井筒俊彦、池田晶子、須賀敦子、神谷美恵子、小林秀雄。 2011年以降、若松英輔さんによる評伝を何点か読んできました。最初のころは、まったく読めませんでした。読んでも読めなかったのです。 けれども、少しずつわかってきたことは、…

608   「旧約聖書学の光と影」 ・・・「旧約聖書と教会 今、旧約聖書を読み解く」(小友聡、教文館、2021年)

「第一部 旧約聖書の思想」は、コヘレトについての興味深い考察を中心に、詠み応えがありました。 けれども、「第二部 旧約聖書と教会」は、はじめに「洗礼を受けていない人との聖餐式はいけない」という結論があって、それを旧約聖書から「根拠づける」スタ…

607   「誰の人生でも、できることがある」・・・ 「人生 すべてには時がある 旧約聖書「コヘレトの言葉」をめぐる対話」(小友聡、若松英輔、NHK出版、2021年)

小友さんは神学教授でキリスト教の牧師ですが、枠に囚われない考えをしています。 「信仰がなくたって、いまをこのように生かされていることは恵みなんだと気がつくんです」(p.29)。 本書の題材である「コヘレトの言葉」は、人間は神のように未来を知り得な…

606   「政治とは最も弱い生命をまもるいのちの仕事」 ・・・「いのちの政治学 リーダーは『コトバ』をもっている」(中島岳志、若松英輔、2021年、集英社)

対談ですので、ひじょうに読みやすいです。しかし、十分な準備に基づいていて、とても深いです。 世界の根底には目に見えない大切なものがある、それは、神、仏、あるいは、いのちなどと呼ばれる、政治は、特定の政治集団にでもなく宗教集団にでもなく、その…

605   「金持ちの利益を貧者に再分配する仕組み造りこそが政治」・・・「政治的思考」(杉田敦、2013年、岩波新書)

「政治は、そうした価値の複数性や多元性を前提としながら、いくつかの『正しさ』の間で調整や妥協を図る営みなのです」(p.39)。 しかし、「価値の複数性や多元性」と言っても、人を殺してはならない、人から盗んではならないという考えと、人を殺してもよい…

604「これでも民主主義は止まらない」・・・「民主主義とは何か」(宇野重規、講談社現代新書、2020年)

「政治において重要なのは、公共的な議論によって意思決定をすることです。言い換えれば実力による強制はもちろん、経済的利益による買収や、議論を欠いた妥協は政治ではないのです」(p.50)。 憲法改正には衆参両議院で三分の二以上の賛成が必要ですが、それ…