2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

726 「古代キリスト教司教の名目」・・・ 「貧者を愛する者 古代末期におけるキリスト教的慈善の誕生」(ピーター・ブラウン、2012年、慶応義塾大学出版会)

「貧者を愛する者」とは、愛の深い信仰者のことではなく、司教たちのことです。つまり、「政治家は有権者の意見を代弁する」というのが実態とは関係のない理念であるように、司教には貧者を愛する者という理念が付されたのです。 しかも、貧者とは経済的な貧…

725 「顔は見えないが手は握れる」・・・ 「読み終わらない本」(若松英輔、2023年、KADOKAWA)

読み終わらない本とはどんな本なのでしょうか。わたしたちは世界をすっかり理解してしまうことなどできません。人間とは、人生とは何か、知り尽くすこともできません。神や真理は、つかんだと思ったら、神でも真理でもありません。つまり、世界も人間も人生…

724 「佛説 武田・定光経  断章」 ・・・ 「佛説まど・みちお経」(武田定光、因速寺出版、2017年、非売品)

「ぞうさん、ぞうさん、おはなが ながいのね」の、まど・みちおさんの詩を、浄土真宗の武田定光住職が読んだ本。 なぜ、これが「佛説」なのか。 「「佛説」とは、「説いた人間に属す出来事」ではなく、それを「佛説」として「受け取った人間に属す出来事」な…

723 「井上ひさしと宮澤賢治の遺言」・・・ 「イーハトーボの劇列車」(井上ひさし、新潮文庫、1988年)

宮澤賢治を主人公にした劇。イーハトーボは賢治の生きた岩手のエスペラント語表記。「列車」は「銀河鉄道の夜」に由来するのでしょう。 門井慶喜という小説家の直木賞受賞作「銀河鉄道の父」を先日読んで、さらに賢治関係を、という思いになりました。 門井…

722 「福音書の言葉の奥底にある、読者の真実」 ・・・ 「新約聖書 福音書 2023年4月 (NHKテキスト)」(若松英輔、NHK出版、2023年)

本書のキーワードのひとつは「コトバ」でしょう。 「文字をなぞっているだけでは十分ではない。文字の奥に言葉を超えたもう一つの「コトバ」を感じなければならない」(p.7)。 「これから「コトバ」と書くときは、文字や声と言った言語には収まらない意味の顕…

721 「里山の新たな姿での回復に希望を」・・・ 「里山学講義」(村澤真保呂他、晃洋書房、2015年)

村澤さんの「中井久夫との対話」とか「都市を終わらせる」とか「福音と世界」に連載中の「霊性のエコロジー」とかがおもしろかったことがあり、また、広島の山地に移住した友人が開く「里山オイコス」というZOOM集会に参加していることもあって、本書を読む…