2020-12-01から1ヶ月間の記事一覧

544 「青、あお、アオ」・・・「黒人霊歌とブルース アメリカ黒人の信仰と神学」(ジェイムズ・H・コーン著、梶原寿、1983年、新教出版社)  

黒人霊歌とブルースは、黒人が受け続けてきた差別、侮蔑、虐待、虐殺の経験に根差している。それにもかかわらず、抹殺、絶滅されない黒人の尊厳を支え、また、その尊厳から歌われている。 「わたしはイエスが来たりたもうときいっしょにもどろう/彼は今日は…

543 「聖書の必ずしもすべてが事実でなくても、信仰はありうる」・・・「キリスト教の再定義のために」(荒井献、2018年、新教出版社)

世界トップレベルの新約聖書学者の、比較的短い文章集。(全10巻と別巻からなる著作集はすでに岩波から刊行されている。) 本著には、荒井さんの研究成果である学問的なものに加えて、彼の信仰に基づくものや現代日本社会・正義・平和にかかわるもの、個人史…

542 「デクノボー先生」・・・ 「青い鳥」(重松清、2010年、新潮文庫)

イエスはたくさんの奇跡を起こしたと聖書は物語っている。しかし、カトリック信者の遠藤周作の描くイエスはそうではない。病人を癒すことはできない。ただ、世の中から見捨てられたその人びとの傍らにじっと寄り添った。それが奇跡だと言う。「おバカさん」…

541 「見えないゼミナール」 ・・・「14歳の教室」(若松英輔、2020年、NHK出版)

入門書であろうと、十代向けであろうと、良い文章は、専門家にも、何歳の人にも、読み応えがある。本書もそのような一冊だ。 現在の学校教育では、学力テストで採点できることを教える。その意味で、それらはみな、「見える」ものだ。学校では、また、自分の…