2022-01-01から1年間の記事一覧
この巻には「Ⅰ 自伝的回想」という章があり、そこには「境界に立って」と「自伝的考察」という文章が収められています。このふたつは、ティリッヒを読むうえでの基本であると聞いています。 都会と田園、現実と夢想、理論と実践、他律と自律、神学と哲学、教…
社会構造によって、警察、軍隊を含む政治の暴力によって、ライフ(いのち、生命、人生、生活)を踏みにじられている人びとがつねに存在します。そして、そこからのリベレーションの行動や文化活動、思想活動がつねになされています。後者はつねにアップデイ…
若松英輔さんはカトリックだが、キリスト教だけが正しい宗教などは言わず、むしろ、他の宗教、文学、芸術、思想の中に、世界の根本にあるものの現われを見いだしていく。 ぼくは、神学に触れて40年、ティリッヒを読んだことはなかったが、昨秋、何かを読んで…
農村伝道神学校出身の友人が複数いたり、二年前にこの神学校に比較的近い教会に転任したり、去年からそこで週に一度学ぶようになったり、長野や広島で農業を始めたキリスト教の友人がいたりで、この本を読んでみることにしました。 「アモスが語った正義と恵…
住職のエッセイ集。読みやすいですが、深い思索に基づいています。 わたしは、比較的リベラル、自由なキリスト教の牧師ですが、読んでいて、それは違う、と思うようなところはありませんでした。その通りです、とか、なるほど、そのように考えるのですね、こ…
誤読ノート634 「母殺父殺を待ち受けるもの」 「別冊NHK100分de名著 集中講義 ドストエフスキー: 五大長編を解読する (教養・文化シリーズ 別冊NHK100分de名著)」(亀山郁夫、2021年、NHK出版) 「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」など、ドストエフスキーの五大…
みすゞは山口県は仙崎の、そして、雅輔(がすけ)は下関の本屋の子どもでした。下関は仙崎の本店にあたります。雅輔はみすゞの弟でした。けれども、下関の本屋夫婦には子がなく、仙崎のみすゞの父は死に家計は苦しく、雅輔は物心つく前に養子に行ったのです…
「『キリスト教徒にならないと救われない』という教えはいかにも『スケールが小さい』。この教会は、そういう差別的な宣教理解は卒業しました」(p.51)。 「『信じる者は救われる』と言います。はたしてそうでしょうか。『信じられない、認められない、分から…
「学びのきほん」とありますが、初心者向けの入門知識が羅列されているのではありません。本書は、おそらくは、すでにキリスト教に親しんでいる人にも、「核心」を、しかも、あたらしい角度から語りかけてくれることでしょう。 たとえば 「アブラハムは一な…
みすゞは雑誌に童謡詩を投稿し、よく掲載されていました。「今なら、You Tubeで自作の詩や歌を披露して若者の人気を集まるアーティストにたとえることもできましょう」(p.13)と著者は言います。 しかし、それ以上は進まなかったようです。詩集出版にはいたら…
629 「自分はダメだと思わない勇気」 「生きる勇気」(パウル・ティリッヒ、平凡社ライブラリー、1995年) 「生きる勇気」は「存在への勇気」とも訳されます。「存在」とは「ある」「いる」という意味ですが、人間の場合は「生きる」といってもいいでしょう。…
深田未来生さんは同志社大学神学部の教員であり、ぼくは学生でした。授業は一コマしかとったことがなく、個人的にとくに親しいわけでもありませんでした。 覚えていることは限られています。 神学部の建物のたしか4階に教員研究室が並んでいて、先輩に誘われ…
「人は皆、罪人です」などと言われたら、「いや、わたしは、悪いことなんかしていない」と思う人が大多数なのではないでしょうか。「神がどうの」などと言われたら、「いや、神なんているわけない」と思う人がほとんどなのではないでしょうか。 けれども、「…
宣教師とは何でしょうか。ある宣教師は、アメリカのキリスト教を日本に教えようとしました。そういう考えは古いと宣教師仲間に批判されたにも関わらず、自分は何と言われようとそうすると。ちなみに、この宣教師は、教会は精神科の代わりではない、と言って…
いかなる権力、支配にも従わない。聖書はそう言っている。初期のキリスト教もそうだった。この本が述べていることは、こういうことではないでしょうか。 では、本書が言うアナキズムとはどのようなものでしょうか。 「無秩序という通常の意味とは異なる an-a…
この本は終末論を批判しています。どのような点が批判されているのでしょうか。 わたしは、この本を読むまでは、終末論について肯定的な印象を漠然と抱いていました。それは、わたしたちが生きている社会や歴史には暴力、権力を持つ者たちによる支配、抑圧、…
昨年、「深い河」「女の一生 一部」「女の一生 二部」と読み、感銘を受け、遠藤周作を読み返さなければならないと思い、本作を読んでみました。 しかし、去年読んだ三冊や、ずっと以前に読んだ「沈黙」や「侍」と、本作とでは、読後感がだいぶ違いました。一…
神学は今回のパンデミックを前にしてどのような考察をするのでしょうか。むろん、どういう対策、政策をとるべきかを考えるのではありませんが、かといって、「これは神から人間への罰である」というような思考レベル以前の発言をするのでもありません。 「私…
もうじき六十歳になるというころから、残りの人生は、死への滑走時間、死を受け入れる準備期間、とわたしは考えるようになりました。ひとつは、年齢そのものがそう思わせるのですが、もうひとつは、それまでの自分の人生が否定されるような経験、ああこれは…
著者は、神学にも詳しい社会学者です。笑いは社会学の重要なテーマのひとつだと思われますが、バーガーの著述そのもののいたるところにも、ユーモアが散りばめられています。 「自分たちの理論をひどく重大なものと考える性癖では、哲学者は神学者につぐもの…
世界にはいくつもの宗教がありますが、残念ながら、それらの中には、自分たちだけが正しい、他は間違っている、という攻撃性を持っているものもあります。本書はそれを乗り越えようとする試みのひとつであると言えるでしょう。それは、同時に、宗教を問わず…
訳者解説では、「「子どもを救え!」というのがこの作品の核にあるメッセージ」(p.216)と述べられています。執筆当時のロンドンには三万人のストリート・チルドレンがいたそうです。そして、この本の大きな目的は「貧困階級の子どもたちの擁護をイギリス国民…
このシリーズは「概説とその中心となる思想を、わかりやすく・・・平易な記述・・・学生・生徒の参考読物として・・・」出されていることになっていて、たしかに、わかりやすいものもあったのですが、この本はひじょうに難しかったです。 哲学用語、哲学の言…