2018-01-01から1年間の記事一覧
「アンは、暁のように生き生きと星のように美しく、ギルバートを待ち受けていた」「その緑はアンの髪のゆたかな色や、星のような灰色の目や、アイリスのように美しい皮膚を引き立てていた。森の小道の木陰を歩きながらギルバートは横目でちらとアンを眺め、…
考えるとは、孤独な作業だ。試験の答案用紙に向かうとき、原稿用紙にペンを走らせるとき、頼りになるのは自分の思考だけだ。 けれども、本当にそうだろうか。問題を解くときは過去に触れた誰かの知識や情報を参考にしていないだろうか。文章を書くときはこれ…
聖書に現われる「共同性」と「終末意識」は、既存の政治への批判となる。「共同性」は「一人支配」を、「終末意識」は現政権の絶対化を批判する(p.2)。イエスは「『政治的なるもの』の本質それ自体を相対化している」(p.28)。 けれども、距離によって、キリ…
原民喜には「夏の花」という小説がある。原子爆弾が投下された広島を書いたものだ。本書は、その原の、梯による評伝だ。 「原は自分を、死者たちによって生かされている人間だと考えていた」(p.14)。 死者とは誰か。 「愛する死者をいわば“聖別”することを生…
重松清の小説は、どこか、あたたかい。救いがある。しかし、空想小説ではない。現実の厳しさを作家はかなり知っている。それをリアルに描いている。けれども、それだけではない。やさしさがある。 離婚、親の離婚、単身赴任、親の介護、スポーツの挫折、家族…
悲しみとはなんだろうか。慈悲という言葉があるように、悲しみには慈しみという意味がある。悲母とは、愛に満ちた母のことだ。悲しみと慈しみというふたつの意味があるのではない。人への慈しみがなければ、その人とのかかわりの中で悲しみは生じない。その…
この本を読んでわかったこと。1)若者が「保守」化して「維新」や「自民」を支持するなどと思ってきたが、若者にとっては、自分たちを経済的困窮に陥れる社会を変えてくれるような政策を示す両党などが革新であり、それを示せない野党は保守と見なされてい…
岩波書店の瀬田貞二訳から五十年ぶりの新訳。ナルニア国物語全七巻中の第六巻。文体も挿絵も、あたらしいゆえの心地良さが、たしかにある。 ナルニア国物語と言えばアスラン、アスランと言えばキリストの比喩、という解釈が定番だが、この本の解説者は、「ア…
新約聖書のマタイによる福音書には、イエスがユダヤのベツレヘムで生まれたとき、東の方から占星術の学者たちがやってきて、黄金、乳香、没薬を贈った、という物語が載っている。キリスト教の学校や教会で、観たことや演じたことがある人もいるだろう。 この…
急がば回れ、と言います。聞き慣れてしまっていますが、この言葉を初めて聞いたとき、強い印象を受けるのは、急ぐことと回り道をすることが正反対のことだからです。逃げるが勝ち、もそうです。ほんらい、逃げることと勝つことはまるでさかさまのことではな…
コリントの信徒への手紙一3:21 ですから、だれも人間を誇ってはなりません。すべては、あなたがたのものです。3:22 パウロもアポロもケファも、世界も生も死も、今起こっていることも将来起こることも。一切はあなたがたのもの、3:23 あなたがたはキリストの…
イエスさまは、とても不思議なことを言っておられました。「悲しむ人々は、幸いである」。悲しんでいる人、悲しいことがあって泣いている人は、幸い、幸せである、という意味になりますが、泣いている人が幸せ、なんて、何か不思議ですよね。 でも、これは、…
岩井先生は論客として知られる。とくに、社会におけるキリスト教会、キリスト教徒のあり方について、おりおりに、鋭い見解を展開してこられたと聞く。 どうじに、やさしい先生だ。集会の時など、「一緒に座りましょう」と声をかけてくださったり、一対一で話…
皆さん、おはようございます。外見は羊のようにやさしいのに、中身は狼のように怖い人がいます。ほんとうは、外見はどうであれ、中身が羊のようにやさしい人が、わたしたちの生きている世界では、求められているのではないでしょうか。 ぶどうの木は、ぶどう…
父は気の短い人でした。よく怒られ、怒鳴りつけられました。一方的にまくしたてられました。こちらの言うことには耳を傾けてくれませんでした。それでも、父が好きでした。父にほめられたかったし、話を聞いてほしかったのです。 大学に入学したものの、まっ…
申命記5:1 モーセは、全イスラエルを呼び集めて言った。イスラエルよ、聞け。今日、わたしは掟と法を語り聞かせる。あなたたちはこれを学び、忠実に守りなさい。5:2 我々の神、主は、ホレブで我々と契約を結ばれた。5:3 主はこの契約を我々の先祖と結ばれた…
皆さん、こんにちは。イエスさまは捕まえられて、裁判に連れて行かれてしまいました。お弟子さんのペトロさんは、自分も捕まってしまうかもしれないと、とてもこわかったので、ほかの人にあまり見られないように、こっそりうしろからついていきました。イエ…
タイトルは以前から知っていましたし、もしかしたら読んだこともあるかもしれませんが、昨年のクリスマスに友人が話題にしていて、今年のクリスマスはあたらしい絵とあたらしい文の絵本も出版予定とのことなので、この旧版を読んでみることにしました。 作者…
「生きていくうえで、かけがえのないこと」(若松英輔、亜紀書房、2016年) 花の奥には何があるのだろうか。内側へと重なりあう花びらが収束する一点はどこにあるのだろうか。 大地が芽を萌やし出す。湖の底にはこんこんと湧き出る泉がある。それらは、わた…
「日本人がギャンブルで損をしたカネで海外のカジノ業者を潤わせる」「アメリカに我が国を売るための法律」(p.31-32)カジノ法とは、日本にカジノを作り、アメリカの業者を入らせ、日本にある金をアメリカへと吸い上げるための法律だということなのですね。非…
「超簡単訳」とありますが、内容編集までしてしまう「超訳」ではなく、学問に根ざした、読みやすく丁寧かつ平易な訳です。 「臨死体験」とありますが、SFやホラーのようなものではなく、そういうことならそうだろう、と納得のいくものです。「そこにはただた…
「教養小説」という言葉がある。ビルドゥングス・ロマンというドイツ語の訳語らしい。主人公が経験によって精神を「形成」していく物語のジャンルのことだ。ビルドゥングスには「教養」「形成」という意味がある。 本巻では、アンは16~18歳。まさに、教養を…
「教皇フランシスコ 12億の信徒を率いる神父の素顔」(マリオ・エスコバル著、新教出版社、2013年) ぼくはプロテスタントの牧師だが、それになるために、そして、なってからも、どれほどの修養を積んできたことだろうか。 本書を読むと、教皇に選ばれるよう…
定年退職後、被災地などでのボランティア活動に打ち込んでいる人びとがいます。ぼくは、宝くじで2億円当たれば、家族で住める住宅を数千万円で買い、残りのお金を二十年の生活費、子どもの学費として、定職には就かず、各地での支援活動、それから、ある種の…
「あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる」(平良愛香、学研プラス、2017年) 著者が大学で語っている話を学生以外にも伝えたい、という編集者の意図を反映して、この本は、ひとつは、講演調で読みやすく、もうひとつは、基礎的な専…
財界人や芸能人などが、百万、千万、億の単位で、寄付や支援や献金し、マスコミに取り上げられることがあります。けれども、残るお金も、千万、億、十億の単位です。小学生が貯金箱の小銭を全部献金しました。一万円にもならないかも知れません。けれども、…
精神、感情、身体、性、言葉、背景など、わたしたちは皆、他の人とは異なっていますが、ほんらいなら、そこには優劣はなく、わたしたちは優へと変わろうとする必要はありません。ありのままでよいのです。神はわたしたちと世界をそのように創造した、と聖書…
翁長雄志さんは人生の最後の四年間を沖縄の人びとにささげました。もともと自民党員で保守政治家でしたが、米軍基地の存在によって沖縄の人びとが苦しめられていることをこれ以上放置できず、辺野古新基地建設を阻止するために、県知事となり、強行する国に…
32歳で詩人は息を引き取った。武蔵高校、早稲田大学卒。いくつもの受賞歴。けれども、そのうらには、いじめや非正規雇用、失恋があったようだ。 詩人は歌で息をした。 「抑圧されたままでいるなよ ぼくたちは三十一文字で鳥になるのだ」 無視されたままでい…
キリスト教史は長く、太い。だから、何冊読んでも、細かいところも覚えきれないし、いくつかの流れも理解し切れない。だから、この本の題のように、「1冊で」、しかも「わかる」と言われると飛びつかないではいられない。じっさい、二千年の教会史を、ざっ…