2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

669「触らず、甘える」・・・ 「寅さんの神学」(米田彰男、オリエンス宗教研究所、2022年)

映画「男はつらいよ」シリーズ全50作を、ぼくは二回通して観ている。一度目は、二年前、心が死を味わっているさなかで、救いを求め、iPadを買い、寝転がって、一か月で観た。二度目はこの夏、やはり、前回と同じタブレットで、冷房を利かせた小さな自室で。 …

668「みすゞの死は神を信じなかったゆえか」・・・「金子みすゞの苦悩とスピリチュアリティ」(窪寺俊之、関西学院大学出版会、2022)

金子みすゞの詩は美しく癒される。彼女の詩は目に見えない世界をも詠んでいる。その意味で宗教的である。けれども、窪寺さんは彼女の宗教性についてこう述べる。 「宗教の機能を認知機能・思考機能・信ずる機能と三分類した。その場合、彼女は認知機能は優れ…

667 「極上の神学が、やさしく、深く物語られる」 ・・・「それで君の声はどこにあるんだ?――黒人神学から学んだこと」(榎本空、岩波書店、2022)

この本は神学と深いかかわりを持っているが、文学である。神学は詩でなくてはならない、とかつて思ったことがあるが、そして、じじつ、ぼくが好んできた神学はどこか詩的なのだが、この本は、文学である。文章が水彩画のように美しい。 ところで、副題に「黒…

666   「17世紀ポカホンタスから21世紀バイデンまで」 ・・・ 「アメリカ・キリスト教入門」(大宮有博、キリスト新聞社、2022年)

とても読みやすく、おもしろい。つまり、何度読んでも意味をつかめずいらいらさせられる難解なセンテンスは出てこない。ほとんどの表現はすらすらっと読める。内容がわかるから、アメリカのキリスト教の歴史はおもしろいと思える。 アメリカのカトリックやプ…

665「二千年は神学の植物園」・・・「キリスト教神学命題集: ユスティノスからJ.コーンまで」(執筆者多数、日本キリスト教団出版局、2022年)

登場人物が豪華。ぼくが名前を聞いたことのある人だけでも、ユスティノス、オリゲネス、アタナシオス、擬デイオニュシオス、アウグスティヌス、アンセルムス、ベルナルドゥス、トマス・アクィナス、エックハルト、オッカム、ウィクリフ、エラスムス、ルター…

664  「イエスはメーメー鳴くか」 ・・・ 「死と命のメタファ: キリスト教贖罪論とその批判への聖書学的応答」(浅野淳博、新教出版社、2022年)

イエス・キリストがわたしたちの代わりに十字架で死んでくれたので、神はわたしたちの罪を赦してくれた、と考えるキリスト者がいる。イエス・キリストが示し、従うように促してくれた道を歩むことが大切である、と考えるキリスト者もいる。両方を考える者も…