2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧
「ロシア正教のイコン」(メドヴェドコヴァ著、黒川知文監修、遠藤ゆかり訳、2011年、創元社)花や木、川、空。さいきん、美しいものは、神の美しさの現れだと思うようになってきました。すると、毎日の風景が、味わい深く、楽しみになってきます。昨秋、版…
「ランボオ詩集」(アルチュウル・ランボオ、小林秀雄訳、1998年、創元ライブラリ) ランボオは「俺は」「俺が」「俺の」「俺を」「俺に」「俺と」と言う。名は体を表す。乱暴なのだ。乱暴なランボオを語る小林秀雄は「僕は」と言う。そんなに乱暴ではないの…
「信じない人のためのイエス入門 宗教を超えて」(スポング著、富田正樹訳、2015年、新教出版社) 聖書にはふつうには信じられないような奇跡がいくつも出てきます。しかし、そんな馬鹿なことがあるはずがない、と最初から相手にしないのは少しもったいない…
子どもには親の愛が必要だ。親は子どもを叱るばかりでなく、愛することが大切だ。それが子どもの成長にはひじょうに大事なことだ。書き出してみたら、どこでもよく言われるようなことなのですが、大学生のころ、こんな主旨の講演を心をひどく揺さぶられなが…
おまえらの主とやらが 我らを撃つことは これで良く分かった ここから出て行ってくれ どこにでも行って おまえたちの主に跪くがよい おまえたちの自由に仕えるがよい わたしはおまえたちの主 寝ずの番をして 奴隷から自由へと解き放つ 約束通りおまえたちを…
「たんぽぽ団地」(重松清、2015年、新潮社)今日とは、4月21日、一日だけのことではなく、過去と未来のあらゆる日々が重なりあっているのではないでしょうか。アルバムのある一頁のことではなく、その一頁を真ん中にした前後の厚み、過去と未来の映像の重な…
大学を終えて一年目。小出版社に就職しましたが、ワンマン社長に怒鳴られまくること数か月。ついに怒鳴り返し、即退社。新聞求人欄で見て、小新聞社に応募。筆記試験は通り、面接。ポストに結果が届くのを待つこと、千年のような一週間。やっとこさ放り込ま…
「砂浜に坐り込んだ船」(池澤夏樹、新潮社、2015年) 2011年以降、死者を書く作家、作品を意識し始めました。池澤さんもその一人です。 彼岸や此岸で死者と出会って語るさまざまな人びとを書いた短編集です。死者と出会う場所を異界と呼ぶなら、これは異界…
吉田拓郎さんの名曲「人生を語らず」は、松任谷正隆さん演奏という印象的なキーボードに始まりますが、「あの人のための自分などと言わず、あの人のために去りゆくことだ」という歌詞も忘れられません。 はたちをいくらか過ぎたころ、大学の同級生を好きにな…
「わが町」(ソーントン・ワイルダー著、鳴海四郎訳、ハヤカワ演劇文庫、2007年) 20世紀初めのアメリカ・ニューハンプシャー州のある町を舞台にした劇ですが、東京の蒲田に脚色しようと神奈川の溝の口(みぞのくち)にしようと、上演は可能です。どの町も誰…
数年前、故郷の小倉を訪ねました。小中学校の同級生数人とほぼ四十年ぶりに会い、楽しい一時を過ごしました。当時のことを語り合いながら、校区では人権教育が盛んだったことを思いだしました。同和教育の授業を受けたり、朝鮮語クラブがあったりしました。…
「あなたたちは撃たない、血と涙を流したから」 無傷の小羊を一匹用意しなさい あなたたちも無傷だったから 夕暮れにそれを屠り、血を取りなさい あなたたちも闇夜に切り裂かれ、血を流されたから その血を柱と鴨居に塗りなさい あなたたちも血塗られたから …
「叫び声は神に届いた 旧約聖書の12人の祈り」(W. ブルッゲマン著、福嶋裕子訳、日本キリスト教団出版局、2014年) ぼくは、ひとりで祈るときは、声も出さないし、頭の中で作文もしない。ただ、そこに生じる静寂に身を沈めるだけだ。祈りとは、自分は黙し、…