2018-12-01から1ヶ月間の記事一覧

456 「ユーモアと敬虔、モンゴメリのキリスト教信仰」   「アンの愛情」(モンゴメリ、村岡花子訳、新潮文庫、2008年)

「アンは、暁のように生き生きと星のように美しく、ギルバートを待ち受けていた」「その緑はアンの髪のゆたかな色や、星のような灰色の目や、アイリスのように美しい皮膚を引き立てていた。森の小道の木陰を歩きながらギルバートは横目でちらとアンを眺め、…

455 「考えるとは、じつは、共同作業だった」  「考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門」(梶谷真司、幻冬舎新書、2018年)

考えるとは、孤独な作業だ。試験の答案用紙に向かうとき、原稿用紙にペンを走らせるとき、頼りになるのは自分の思考だけだ。 けれども、本当にそうだろうか。問題を解くときは過去に触れた誰かの知識や情報を参考にしていないだろうか。文章を書くときはこれ…

454 「政治とキリスト教の距離の伸縮」  「入門講義 キリスト教と政治」(田上雅徳、慶應義塾大学出版会、2015年)

聖書に現われる「共同性」と「終末意識」は、既存の政治への批判となる。「共同性」は「一人支配」を、「終末意識」は現政権の絶対化を批判する(p.2)。イエスは「『政治的なるもの』の本質それ自体を相対化している」(p.28)。 けれども、距離によって、キリ…

453 「死を死ねなかった死者に生かされる」   「原民喜 詩と愛と孤独の肖像」(梯久美子、岩波新書、2018年)

原民喜には「夏の花」という小説がある。原子爆弾が投下された広島を書いたものだ。本書は、その原の、梯による評伝だ。 「原は自分を、死者たちによって生かされている人間だと考えていた」(p.14)。 死者とは誰か。 「愛する死者をいわば“聖別”することを生…