2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

92 「わたしらしく生きるための銃とキリスト教」

「新島八重ものがたり」(山下智子、日本キリスト教団出版局、2012年) 140頁の小著ながら、八重の生涯がわかりやすくまとめてあります。また、兄の山本覚馬や夫の新島襄のみならず、八重を批判する者たちも含めて、まわりの人物も要領よく描かれています。 …

91 「神と隣人、社会と共同体、そして自分の前に立つための霊性」

「改訳新版 共に生きる生活」(ディートリヒ・ボンヘッファー著、森野善右衛門訳、新教出版社、2004年) 霊性と言っても、オカルトや憑依、超常現象のことではありません。神の前に立ち、その姿勢を基として、隣人と社会、また、自分の前にも立つありよう、…

90 「3・11直後の人々の心と、海に襲われた町の風景、そして、かすかな展望を言葉で残す試み」

「双頭の船」(池澤夏樹、新潮社、2013年) 池澤夏樹は被災者ではありません。けれども、3月11日直後から、被災地に入り、見つめ、聴き、感じ、考え、よく書いてきた作家です。三月十一日文学とでも呼ばれるものが、やがて、東北の民中心に担われるように…

89 「想像力こそが死者と生者を結ぶ電波、いや・・・」

「想像ラジオ」(いとうせいこう、河出書房新社、2013年) つぎに被災地に行く時は、ボランティア・ワークだけでなく、死者の前で手を合わせ、ゆっくり祈りたいと思った。けれども、それは、この世をうろついてほしくない、化けて出てほしくない、ということ…

88 「聖書の登場人物と風景の詩的表現」

「旧約聖書物語 上・下」(ウォルター・デ・ラ・メア著、阿部知二訳、岩波少年文庫、2012年) 旧約聖書の前半は歴史物語のスタイルをとっていますが、登場人物の複雑で多彩な心理や、その舞台となる自然や建物には、ほとんど触れられていません。 本著は、こ…

87 「ことばをりんかくからときはなちにじませる者は、いっせいきのはんぶんまえに」

「abさんご」(黒田夏子、文藝春秋、2013年) 文字を読んでいるのか、それとも、ゆらゆらと伸び縮みするくらげの群れのやや濁った水槽を眺めているのか、わからなくなってしまう。墨の乾かない山水画、母の胎での浮遊、あの世、蛍の点滅・・・そんな感じです…

86 「演じるとは、生きること」

「演技と演出のレッスン 魅力的な俳優になるために」(鴻上尚史、白水社、2011年) この世界が舞台なのか、演劇が人生なのか。 人が役者なのか、演じることが生きることなのか。 「演技と演出のレッスン」と題されたこの本ですが、俳優などではないボクたち…