2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

720 「神さえいない最悪の時に神がいるという逆説」・・・ 「どう読むか、新約聖書 福音の中心を求めて」(青野太潮、2020年、ヨベル新書)

著者によれば、イエスが提示した「福音の中心」とは、「逆説的な「さいわいなるかな」=「インマヌエルの原事実」の宣言と、神の「無条件で徹底的な愛とゆるし」」(p.138)です。 つまり、「インマヌエル」(神が私達と共にいること)と「無条件の愛」(善人…

719 「柄谷行人によるキリスト教新解釈」 ・・・ 「力と交換様式」(柄谷行人、2022年、岩波書店)

人や組織は互いにモノを交換する。しかし、そこには、平等な交換もあれば、不平等な交換もある。 著者は四つの交換様式を挙げる。「A 互酬(贈与と返礼) B 服従と保護(略奪と再分配) C 商品交換(貨幣と商品) D Aの高次元での回復」(p.1-2)。 ぼくがこれ…

718 「聖霊の働きをふり返り、聖霊とともに歩む」 ・・・ 「しばし立ち止まり、ふり返る: 人生の旅路と霊性」(太田和功一、あめんどう、2022)

この本の題の最後に「霊性」という言葉が出てきます。これはどういう意味でしょうか。 「私にとっての霊性は、イエス・キリストを救い主・主として信ずる者がその信仰に生きる生き方に現れるものであり、それは、聖霊によって生きること、聖霊に歩調を合わせ…

717 「『信ぜよ』と言われても信じなくてよい理由」 ・・・ 「〈真実〉のデッサンⅢ ややこしい話題」(武田定光、2022年、因速寺出版)

タイトルの真実にはなぜ〈 〉がついているのか。素描とも訳されるデッサンという語が使われているのはなぜか。なぜ「ややこしい」と形容するのか。 「人間は〈真実〉そのものを生きることはできない。〈真実〉に背いているという感触だけが〈真実〉を感じ取…

716 「詩が結ぶもの、断つもの」・・・ 「詩のきらめき」(池澤夏樹、2018年、岩波書店)

いくつものおもしろい詩が紹介され、それへのおもしろいコメントが記されている。 たとえば、 湯豆腐やいのちのはてのうすあかり(久保田万太郎) 「俳句は離れたもの同士を結んで感興を得る。人事と天象とか、生活の具体的一面と心の底の思いとか、ともかく…

715 「死は無い。なぜなら、死は無だから」 ・・・ 「死とは何か  さて死んだのは誰なのか」(池田晶子、2009年、毎日新聞社)

この本は「死とは何か」という問題の「正解」を述べているのではありません。むしろ、わたしたちにはそれはできないということを伝えているのです。 「なぜ、生きている人が死んでいることについて語ることができるのだろうか。なぜそれが本当のことだとわか…

714 「中井久夫から庶民へのプレゼント」 ・・・ 「中井久夫スペシャル 2022年12月 (100分 de 名著)」(斎藤環、2022年、NHK出版)

「患者の弁護士」。精神科医中井久夫をこの本の中でもっともよく表現する言葉がこれでしょう。これは、フロイトの言葉で、中井が何度も引用し、本書の著者斎藤環も、中井が「患者の弁護士」であったと評しています。 これは、本書の表紙では「病を治そうとす…

713 「高齢まで生きる、ということが、現代宗教の前提となりうるのか」 ・・・ 「教養としての世界宗教史」(島田裕巳、2023年、宝島社)

宗教の起源、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、イラン宗教、バラモン教、仏教、ヒンドゥー教、中国の諸宗教、日本の諸宗教について、450頁に収められている。 それぞれの章の副題によれば、ユダヤ教の章は「一神教の源流」という観点から、キリスト教は「…