2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

560 「未来はマシになるという希望をくれる社会学」 ・・・  「21世紀を生きるための 社会学の教科書」(ケン・プラマー著、赤川学監訳、ちくま学芸文庫、2021年)

個人の人生に起こることには社会的な背景がある。個人的なことに思えても、それは、じつは、社会的なことなのだ。 「失業のライフストーリーによって明らかになるのは、個人の失敗ではなく、より広い経済の仕組みである。同性愛は個人の病理ではなく、法律と…

559 「社会はこのまま進歩するとは限らない」・・・「マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家」(野口雅弘、中公新書、2020年)

1789年のフランス革命勃発あたりからを近代とみると、1864年生まれ1920年没のウェーバーは、近代の成人期から中年期を生きた、と言うことができるかも知れません。 本書は、ウェーバーがどういう意味で近代と格闘したと言うのでしょうか。 「究極的な『実体…

558 「救われると信じ込むための強迫行為と、その反対」・・・「ヴェーバー入門 ―理解社会学の射程」(中野敏男、ちくま新書、2020年)

「精神なき専門人、心情なき享楽人、この無なるものが、人間性のかつて到達したことのない段階にまですでに登りつめた、と自惚れている」 著者によると、これはマックス・ヴェーバー(ウェーバーとも表記される)の「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の…

557 「キリスト教が資本家の搾取と貪欲な金儲けを支えたのではないか」・・・ 「マックス・ウェーバーを読む」(仲正昌樹、講談社現代新書、2014年)  

プロテスタント信仰が初期資本主義の展開の駆動力になった、とウェーバーは言う。しかし、利潤を追求することと神を信仰することは矛盾するのではないか。 以下は、本書を読んで、厳密にではなく、浅く、あるいは、間違って理解した上での、ぼくの勝手な展開…

556 「連行せずに、待機する。食べずに、見る」・・・「神を待ちのぞむ」(シモーヌ・ヴェイユ、今村純子訳、河出書房新社、2020年)

訳者によれば、本書の原題を直訳すると、「神の待機」となる。これには、「神が(わたしたちを)待つ」という意味と、「(わたしたちが)神を待つ」意味がある。 ぼくなりにこれを言い変えよう。「(わたしたちが)神を待つ」とは、「神が(わたしたち)を待…

555 「誰をも拒まない瞬間社会を創り出す生きた力」・・・ 「社会学者、聖書を読む」(高橋由典、教文館、2009年)

本書に出てくる聖書の登場人物にとって、社会は出来事の背景・原因というよりも、むしろ行先・結果なのです。 この本の十のエッセイは、タイトルからの予想を裏切って、じつは、社会学の方法を用いた聖書解釈ではありません。それぞれのエッセイでは、中心と…

554 「企業はなぜ高学歴を採用するのか」・・・「解読 ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』」(橋本努、講談社選書メチエ、2019年)

同じ机を十個作るとしよう。ひとりは、気が向いた時だけその仕事をする。脚を作っていたかと思うと、すぐにやめて、水を飲み、煙草を吸い、寝転がる。ようやく起き上がったと思うと、脚の製作の続きをするのではなく、天板にとりかかる。と思うと、これまた…

553 「見失った根源へ、感じ損なった永遠へ」・・・「読書のちから」(若松英輔、亜紀書房、2020年)

「マッチ売りの少女」は悲しいお話だった。だが若松さんは言う。「この作品は、生者と死者の世界を貫く悲愛の物語にほかならない・・・悲しみの種子が愛(かな)しみの花へと変貌していく物語」(p.127)。悲哀ではない。悲愛だ。ああ、マッチをするとはこうい…

552 「即答して孤独から逃げず、問い続け世界を耕す」・・・「若き詩人への手紙 若き女性への手紙」(リルケ、高安国世訳、新潮文庫)

訳者によれば、リルケは「実りない孤独を、豊穣な孤独にまで持ち上げ」「死を単なる死滅、消滅の意味から、われわれの生に意義あらしめる強大な力にまで高めた」(p.110)詩人です。 リルケは若き詩人に言います。「あなたの孤独を愛してください。そして、孤…

551 「ボクが牧師に足りないもの」・・・「牧師とは何か」(日本キリスト教団出版局、2013年)

牧師になって三十年。だが、ボクはろくな牧師ではありません。六十歳にしてそう痛感することがまたあり、反省し、他の人に学ぼうと思い立ち、この本を手にしました。(というか、安い古本はないか探していたところ、著者のおひとりにご恵贈いただきました。…

550 「人と自然を貧困と異常気象から守るために」・・・「NHK 100分 de 名著 カール・マルクス『資本論』」(斎藤幸平、NHK出版、2020年)

とても読みやすい。とてもわかりやすい。 年収1000万を超える人もいれば100万に満たない人もいる。他方、夏が異常に暑くなったり、経験したことのないような大雨が降ったり、パンデミックが起ったりして苦しんでいる人びとがたくさんいる。 マルクス!とか資…