295  「若者に徹底的につきあう、その向こうに」

「若者と生きる教会 伝道・教会教育・信仰継承」(大嶋重徳、教文館、2015年)

著者、二回の講演がこのように出版されるのは、内容が良いというだけでなく、教会やキリスト教出版界がこのテーマの本や議論、方法を切実に求めていることを示しているのではないでしょうか。

ぼくは、教会はたんに多くの人や若者が集まればそれでよしとは思いませんが、教会が拡大し自らを誇るためではなく、なんとか自立を維持するためには、こういう学びも必要かなと思います。すぐに飛びつくつもりはありませんが、ぼくが知らなかったり、食わず嫌いしていたりした世界があるかも知れないと思い、手にしてみました。

キリスト教が唯一正解の真理とは考えませんが、キリスト教や聖書の奥底「にも」潜んでいる、すべてを生かす世界の根源や、教会や信仰や聖書や祈りを人生の支えとする生き方をわかちあうことは有意義だと思います。

この本から学んだ一番のことは、そういうわかちあいの前提として、牧師や教会の人が、若者に徹底的につきあい、信頼関係を築くことが必要だということです。説教ではなく、失敗を含む若者の言動に牧師が時間をかけて心をこめて丁寧に向き合うことが、若者を教会につなぐと。

そう言えば、ぼくが学生時代お世話になった牧師も、いつ行っても嫌な顔をせずお金を貸してくださいました。追加の借金はせずに、その都度お返ししていましたが、それでも、何十回もお貸しいただいたと思います。ご飯も食べさせてくださり、話もきいてくださいました。

ただし、これには人間関係だけのつながりに留まる恐れもあるでしょう。大切なことは、若者が世界の奥に潜む神の息吹、霊に触れていくための案内ではないでしょうか。オカルトではなく、世界の根源に憧れ、予感する身のあり方のことです。人間関係だけではその深みには届かなかったり、妨げになったりする可能性もあります。知識ではなく霊性(これもオカルトではありません、世界の根源の予感、感受のことです)涵養のための読書へ誘うこともよいのではないでしょうか。

「最近の若い者は・・・」とか「ひさしぶりだね」など話しかけることは良くないようです。

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