静かだったその島が
四十日四十夜
大雨に見舞われた
地は水で覆われた
水嵩は増し続け
丘の頂をも呑み込んだ
鳥も家畜も獣も虫も人も
ことごとく息絶えた
ただ箱舟だけが
海原に漂っていた
百五十日経っても
水は撤退しない
と、小さな風が吹いた
風は日に日に強くなる
水が退き始めた
雨が降り止んだ
止まないと思っていたのに
誰かが言った
止まなかった雨はない
丘の頂が顔を見せた
島の輪郭が現われてきた
見よ、地はすっかり乾いた
人々と動物は箱舟の外に出た
新しくなった島の地を
踏みしめた
二度と滅ぼさない
雨には二度と支配させない
と誓う声が聞こえた