聖書の話を身近な経験に置き替えてみた

(42)「弱い人を助ければ、神さまにしたことになります」

笠地蔵という日本のお伽話があります。貧しいおじいさんが笠を売りに出かけますが、ちっとも売れません。売れないと、年越しのお餅すら買えません。けれども、吹雪模様となり、あきらめて家路につきます。途中、七つのお地蔵さんが雪に晒されているのを見て…

(41)「日は誰の上にも昇ります」

沖縄の離島に一泊したことがあります。宿の庭の芝生にあおむけになって、上を見ると、満天の星空でした。東京では夜空をすみからすみまで見渡して星を探さなければなりませんが、その島では散りばめられた無数の星粒の間にようやく夜の闇が顔をのぞかせてい…

(40)「美しさを誰にも惜しまない花を、花瓶にさし、木枠の出窓においてみます」

花は見る人の心をなごませてくれます。花はその美しさ、愛らしさ、明るさ、あざやかさ、望みを、さらにいえば、その哀しさ、その痛みを、誰に対しても惜しむことはありません。花は誰にでも無条件にそのいのちの姿をあらわし、見る者、触れる者、香りを受け…

(39)「恐れるな、大丈夫だ、たとえ体は死んでも、魂は死にません」

病気になって心配なとき、わたしたちは何を心の支えにするでしょうか。まずは、お医者さんかも知れません。お医者さんが、にこやかだったり、こちらの話を良く聞いてくれたり、説明がていねいでわかりやすかったりすれば、とても安心できます。それから、薬…

(38)「ひとつの場に身を置きながらも、ほんとうはもうひとつ別のところにも属してる」

二重国籍が話題になりました。たとえば、日本という国に属し、同時に、アメリカという国にも属する状態です。けれども、じつは、これは、そんなに珍しいことではありません。非正規雇用の人なら、ふたつ、みっつの職場を掛け持ちして働いている人もいるでし…

(37)「個人を超えた大きな文脈から、その人の死、そして生を見つめ直す」

「ちゅらさん」というNHKの朝のドラマで、小学生の男の子が難病で死んでしまったとき、涙が止まらない子どもたちに「おばあ」は、「かずやくんみたいな子どもは、いのちの大切さを教えるために生まれて来たのさ」と言いました。 もちろん、死ぬ前からそのよ…

(36)「わたしたちには死で終わらない何かがあります」

死んでしまったら、すべてがおしまいになってしまうのでしょうか。肉体の生命、わたしたちの生物としての生命が終わってしまったら、すべてなくなり、ゼロになってしまうのでしょうか。 わたしたちは、そういう虚無感に浸ってしまうこともありますが、はんた…

(35)「遠くを見て歩くための光」

校庭に石灰で線を引いたことがありますか。白くすっと伸ばすのは、なかなか難しく、すぐに蛇のようにくにゃっとなってしまいます。砂浜をまっすぐに歩くのも、簡単ではなく、足跡はどうしてもくねくね波打ってしまいます。 けれども、校庭では、これから引く…

(34)「手を握って離さないでいてくださるお方がおられます」

「お手て、つないで、野道を行けば」。今から百年近く前に作られた童謡の一節です。「手をつないで、いつまでもずっと」。十年くらい前にヒットした「雪の華」という歌謡曲の一節です。 子どもは家族や友達や大人と手をつなぎたがります。大人は好きな人の手…

(33)「誰もが名前で呼ばれます」

「どの子にも、すばらしい名前がある」(Every child has a beautiful name)。ゴダイゴが歌っていた「ビューティフル・ネーム」の一節です。「どの子にもひとつの生命が光ってる、呼びかけよう名前を すばらしい名前を」。番号や記号にされたり、「そこの人」…

(32)「土から出て、土に還ります」

草は土から生え、やがて枯れ、朽ち、土へと戻っていきます。それが草の本来の姿でしょう。けれども、わたしたちは、草を刈り、ビニール袋に詰め、回収日にゴミとして出しています。焼却炉で燃やされるのでしょうか。土に還れなかったゴミはどこに帰って行く…

(31)「わたしはあなたを責めない。あなたの新しい道を行きなさい。」

「この馬鹿やろう。おまえはいったい何を考えているんだ」。こう怒鳴られる、とびくびくしていました。それまでの二十年間も、ことあるごとにこうでしたから。大学に入学したもののまったく通学せずに一年が経ち、二年目の出直しにも失敗しました。もう退学…

(30)「人を優劣や価値で判断しない」

毎朝、花瓶の水を換えています。夏場は花も長持ちしません。色があせたり、花びらが落ちたり、形が崩れたり、枯れかかったりした花は、器の外に出してしまいます。ゴミ箱に放り込むのは忍びないので、裏庭の土に置くようにしています。それでも、そういう花…

(29)「自分の外に根ざした言葉」

「借り物ではなく、自分の言葉で語ろう」などとよく言います。たしかに、本当にそうかなと考えもせずに、さいきん聞きかじったもっともらしい言葉を鵜呑みにして、ぺらぺらとしゃべってしまうのはどうかなと思います。 けれども、言葉は聞いたり読んだりして…

(28)「なにか生き生きとしたもので、心や体が満たされたいものですね」

今日は何もする気が起こらない、一日中、家でごろごろしていたい、という日があります。体を動かすのが大変だ、いや、それどころか、どうしても体が動かない、という時があります。気持ちがしっかりしない、やる気が出てこない、気持ちが重くて仕方がないこ…

(27)「わたしたちとつながり、生かしてくれる、目に見えないたいせつなもの」

「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」。星の王子さまの有名な言葉です。「ドブネズミみたいに美しくなりたい 写真には映らない美しさがあるから」。ザ・ブルーハーツというバンドが30年近く前に歌った「リ…

(26)「一緒にいてくれる人がいるから、恐れることはありません」

「おまえたちを連れて行ってやれなくて、すまなかった」。監督先生は、後日、生徒たちにこう謝りました。中学校生活最後のサッカー大会。都大会出場権をかけた11試合目に敗北したのです。試合の直後には、「力をすべて出し切ったね」ともねぎらっていたそう…

(29)「自分の外に根ざした言葉」

「借り物ではなく、自分の言葉で語ろう」などとよく言います。たしかに、本当にそうかなと考えもせずに、さいきん聞きかじったもっともらしい言葉を鵜呑みにして、ぺらぺらとしゃべってしまうのはどうかなと思います。 けれども、言葉は聞いたり読んだりして…

(25) 「人格は別々でも、あるこころざしではひとつになることがあります」

父親は、足は遅く、持久力も筋力もないのに、子どもたちは、百メートルでも、1500メートルでも、クラスで片手に入るくらいの運動能力に恵まれています。父親は、部活を続けたことなどないのに、子どもたちは、入学時から最終学年まで、やり抜いています。い…

(24) 「言葉には、その通りになるかならないかを超えた力があります」

「守ってあげられなくてごめんと胸の中で語りかけた。事件を起こさせない仕組みを政治が作れなかった。二度と事件を起こさせないため、私が先頭に立ってがんばる」。これは元米兵に殺された二十歳の沖縄女性に花を手向けた翁長県知事の言葉です。 この言葉に…

(23) 「自分で種を播いたわけではないが、畑はもう実っている」

わたしたちは、自分に必要なものはみな自分で手に入れる、自分が持っているものはみな自分で獲得した、と思っているかも知れませんが、ほんとうにそうなのでしょうか。たしかに、着るもの、食べたり飲んだりするもの、住むところ、本、CD、電気製品、家具、P…

(22) 「枯れても枯れてもまた潤してくれる泉」

春から夏にかけて、庭は放っておけば、雑草だらけになってしまいます。抜いても抜いても、また生えてきます。秋になり冬になり、すっかり枯れてしまったと思っても、春が来れば、また緑を濃くし始めます。庭の土には、草を次から次に芽生えさせる生命力があ…

(21) 「人間は何でもできるわけではなく、神は人間と同じではありません」

親は子どもを見て、自分の子どものころと比べます。よくやっているなあ、と感心する場合も多いかもしれませんが、自分の子どもだったらもっとできるはずなのに、どうしてこんなこともできないんだ、といらだつ場合も少なくないでしょう。自分の子どもにはこ…

(20) 「世の中には、もうひとつ、気づかない側面がある」

どくだみは、匂いが独特できつかったり、暗くじめじめしたところに繁殖したり、抜いても抜いてもまた生えてきたりで、鼻つまみ者のイメージがあるも知れません。けれども、初夏には、質素で真っ白でかわいい花の群れを咲かせ、それに気づく人々の目を休ませ…

(19) 「産み、育て、無償で与え、力を満たしてくれる存在」

子どもたちは母親とよく話をします。とくに父親が留守だったり寝室や仕事部屋にこもったりしているときは、とてもリラックスするようで、食卓で向かいあったり、リビングのソファに並んで腰かけたりして、サポートするJリーグ・チームの最近の試合のことや、…

(18) 「気持ちをわかってくれる人がそばにいて、その人を愛することの平安」

ある人と大喧嘩になりました。その人からは絶縁が言い渡され、仕事も断られました。たしかに声を荒げて抗議をしたりしましたが、そこまでの経緯や相手の非もあり、断絶は一方的な暴力のようにこちらを打ちのめし、心身に相当応えました。 けれども、幸いなこ…

(17) 「遠くにいても、胸に抱けば、潤してくれる」

その人と一緒にいたい、と願っています。声が聞きたい。話がしたい。うれしくなるから。胸が弾むから。気持ちがやさしくなるから、と。しかし、いつも一緒にいられるわけではありません。けれども、一緒にいないようだけれども、一緒にいることもあるのです…

(16) 「親の愛をあまり感じられずに大人になった人のための親」

子どもには親の愛が必要だ。親は子どもを叱るばかりでなく、愛することが大切だ。それが子どもの成長にはひじょうに大事なことだ。書き出してみたら、どこでもよく言われるようなことなのですが、大学生のころ、こんな主旨の講演を心をひどく揺さぶられなが…

(15) 「どんなに深く長く苦しんでもかならず喜びがやってくる」

大学を終えて一年目。小出版社に就職しましたが、ワンマン社長に怒鳴られまくること数か月。ついに怒鳴り返し、即退社。新聞求人欄で見て、小新聞社に応募。筆記試験は通り、面接。ポストに結果が届くのを待つこと、千年のような一週間。やっとこさ放り込ま…

(14) 「あの人のための自分などと言わず」

吉田拓郎さんの名曲「人生を語らず」は、松任谷正隆さん演奏という印象的なキーボードに始まりますが、「あの人のための自分などと言わず、あの人のために去りゆくことだ」という歌詞も忘れられません。 はたちをいくらか過ぎたころ、大学の同級生を好きにな…