(32)「土から出て、土に還ります」

草は土から生え、やがて枯れ、朽ち、土へと戻っていきます。それが草の本来の姿でしょう。けれども、わたしたちは、草を刈り、ビニール袋に詰め、回収日にゴミとして出しています。焼却炉で燃やされるのでしょうか。土に還れなかったゴミはどこに帰って行くのでしょうか。煙となって天に昇って行くのでしょうか。灰となって埋め立てなどに使われるのでしょうか。

毎朝、家の周りの歩道を掃いています。タバコの吸い殻、空き箱、落葉、紙類は、塵取りに集め、ゴミ箱に入れます。ペットボトルや空き缶は近くの自販機横の回収箱に入れるか、うちに持って帰り、分別します。

今朝はオリーブの実が落ちていました。本当なら土に還るものが、アスファルトに落ちてしまったのです。道路に面した木の枝からは、そうなってしまうのですね。でも、塵取りに掃き入れ、ゴミ箱に捨てるのには、どうも、ためらいを感じます。

昨日は青紫のチョウチョの骸がありました。その前には干からびたミミズ、ずっと前には、ガマガエルが。歩道の面している小学校の柵の中の土に帰しました。

草、オリーブの実、チョウチョ、ミミズ、ガマガエル。そもそも、どこから来たのでしょうか。土から生まれてきたのでしょうか。

わたしたちは、どうでしょうか。聖書によれば、イエスはこう言いました。「自分がどこから来たのか、そしてどこへ行くのか、わたしは知っている。しかし、あなたたちは、わたしがどこから来てどこへ行くのか、知らない」。わたしたちは、イエスのことだけでなく、自分がどこから来てどこへ行くのか、知っているでしょうか。

エスは、つづけてこう言いました。「わたしはひとりではなく、わたしをお遣わしになった父と共にいる」。父とは神のことです。草が土から出て土に還るように、イエスは神から出て、神に還ることを知っておられたのです。また、出発点と到着点だけでなく、その間の道のりでも、神が一緒にいてくださることを知っておられたのです。

わたしたちもそうではないでしょうか。わたしたちも、神から出て、今ここにいて、今ここでも神がともにいてくださり、やがて、神のもとに還るのです。