(34)「手を握って離さないでいてくださるお方がおられます」

「お手て、つないで、野道を行けば」。今から百年近く前に作られた童謡の一節です。「手をつないで、いつまでもずっと」。十年くらい前にヒットした「雪の華」という歌謡曲の一節です。

 子どもは家族や友達や大人と手をつなぎたがります。大人は好きな人の手を握りたくなります。手をつなぐと、ひとりではない、と安心できます。手をつなぐと、好きな人と一緒にいることを強く感じられます。

 風船はひもを握った手を放すと、空に舞い上がってしまいます。船は岸壁の係船柱(ビット)にロープで繋いでいないと、沖に流されてしまいます。

 下に落ちまいと何かをしっかりにぎっていても、その手がするっと緩んでしまったとき、誰かがさっと手を伸ばし、手のひらか手首をつかんでくれれば、奈落の底に叩きつけられなくてすみます。

 わたしたちは、生きるために、ここにいるために、何かにつかまります。いや、何かがつかまえていてくれます。

 聖書によると、イエスはこう言いました。「わたしは彼らに永遠の命を与える。彼らは決して滅びず、だれも彼らをわたしの手から奪うことはできない」。

 「永遠の命」とは何でしょうか。永久に生存し続けることではありません。それは、この文脈で言えば、イエスの手の中で守られ、何ものによってもそこから奪い去られないことです。つまり、イエスがずっと手を握っていて、離さないでいてくれることなのです。

 イエスはこうも言っています。「だれも父の手から奪うことはできない」。父とは神のことです。つまり、神はわたしたちの手をつかみ、どんなことがあっても、その手を離さない、と言うのです。

 わたしたちは誰も皆、手を握られていると安心します。神はそうしてくださる、とイエスは気づかせてくれるのです。