「あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる」(平良愛香、学研プラス、2017年)
著者が大学で語っている話を学生以外にも伝えたい、という編集者の意図を反映して、この本は、ひとつは、講演調で読みやすく、もうひとつは、基礎的な専門性も備えています。また個人史としても掘り下げられています。つまり、読みやすいうえに、詳しく、深い内容なのです。
著者は牧師です。タイトルからも窺われるように、セクシャリティの話を、キリスト教/聖書と絡めて、展開しています。
キリスト教はゲイを認めていないのではないかと思われる向きがあるかもしれませんが、本著は、そういうキリスト教徒もいることを指摘しながらも、差別されている立場から聖書を読みなおせば、LGBTは神に愛されていることが発見されることを伝えています。著者自身の、思春期からの何年、十数年、何十年が、まさにそのようなプロセスだったのです。
聖書には人権侵害の言葉も数多くありますが、「一番大切なのは、『神が私たちを愛してくださっている』『だから私たちも互いに愛し合うことができるということ』」(p.183)と著者は言います。そして、聖書にもある人権侵害の言葉や考え方は、(著者の言葉で言えば)「乗り越える」ことができるのです。つまり、解釈の新しい可能性や、その言葉が発せられた時代状況と現代の違いの考慮によって、そうできると。
自身のセクシャリティと向き合う中で、そして、聖書を読み、神を想う中で、著者は「私が私を愛せなくても、私を愛してくれる存在がいるのだ」(p.267)というキリスト教の中心メッセージに辿り着きます。