2016-01-01から1年間の記事一覧

(26)「一緒にいてくれる人がいるから、恐れることはありません」

「おまえたちを連れて行ってやれなくて、すまなかった」。監督先生は、後日、生徒たちにこう謝りました。中学校生活最後のサッカー大会。都大会出場権をかけた11試合目に敗北したのです。試合の直後には、「力をすべて出し切ったね」ともねぎらっていたそう…

(29)「自分の外に根ざした言葉」

「借り物ではなく、自分の言葉で語ろう」などとよく言います。たしかに、本当にそうかなと考えもせずに、さいきん聞きかじったもっともらしい言葉を鵜呑みにして、ぺらぺらとしゃべってしまうのはどうかなと思います。 けれども、言葉は聞いたり読んだりして…

336  「頭がよく、祈り、かつての考えを翻すことのできるシスター」

「心を灯すマッチのように」(高野澄子、KADOKAWA、2014年) 東京純心女子学園の理事長であるシスター高野が、創立者であり、日本のマザー・テレサとも呼ばれたシスター江角ヤスの言動を想い起こして、まとめた一冊。 日本のカトリック女学校は、このような…

(25) 「人格は別々でも、あるこころざしではひとつになることがあります」

父親は、足は遅く、持久力も筋力もないのに、子どもたちは、百メートルでも、1500メートルでも、クラスで片手に入るくらいの運動能力に恵まれています。父親は、部活を続けたことなどないのに、子どもたちは、入学時から最終学年まで、やり抜いています。い…

(24) 「言葉には、その通りになるかならないかを超えた力があります」

「守ってあげられなくてごめんと胸の中で語りかけた。事件を起こさせない仕組みを政治が作れなかった。二度と事件を起こさせないため、私が先頭に立ってがんばる」。これは元米兵に殺された二十歳の沖縄女性に花を手向けた翁長県知事の言葉です。 この言葉に…

(23) 「自分で種を播いたわけではないが、畑はもう実っている」

わたしたちは、自分に必要なものはみな自分で手に入れる、自分が持っているものはみな自分で獲得した、と思っているかも知れませんが、ほんとうにそうなのでしょうか。たしかに、着るもの、食べたり飲んだりするもの、住むところ、本、CD、電気製品、家具、P…

335  「猫にも人にもやさしい川柳集」

「日なた猫の近江百景 1/0380000」(2016年)友人のおつれあいの川柳集です。 「過労死と職に就けない人といて」「ファミレスで働く主婦とだべる主婦」「クーラーをかけても開けとく猫の幅」猫にも人にも心を配った川柳です。 「くす玉は割れない方…

334  「最高、感動、深淵の文学。少女が天使になり、ときが永遠になるまでの、ながいながい渡り鳥のお話」 「ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語」(津島佑子、集英社、2016年)

ハポ(かあちゃん)はアイヌの地の旅籠の納屋でおらを産んで、チカップと名付けてくれました。父はニホン人のようですが、誰だかわかりません。じつはほかのこともほとんどわかりません。だけど、ジュリアン兄しゃまがほんのすこしだけ誰かから聞いたことを…

333  「流刑の国民詩人」 「プーシキン詩集」(金子幸彦訳、岩波文庫、1953年)

「しずかに 詩人は いきを 引き取った」19世紀のロシアの国民詩人、プーシキンは、決闘による重傷で息を引き取った、とこの本の解説は伝えています。けれども、それは、けっして詩人が血気盛んだったことを意味しません。それは、むしろ、皇帝から迫害された…

(22) 「枯れても枯れてもまた潤してくれる泉」

春から夏にかけて、庭は放っておけば、雑草だらけになってしまいます。抜いても抜いても、また生えてきます。秋になり冬になり、すっかり枯れてしまったと思っても、春が来れば、また緑を濃くし始めます。庭の土には、草を次から次に芽生えさせる生命力があ…

(21) 「人間は何でもできるわけではなく、神は人間と同じではありません」

親は子どもを見て、自分の子どものころと比べます。よくやっているなあ、と感心する場合も多いかもしれませんが、自分の子どもだったらもっとできるはずなのに、どうしてこんなこともできないんだ、といらだつ場合も少なくないでしょう。自分の子どもにはこ…

332  「論理的な一本道を求める話し方は、広場のマーケットのようにあちこちに広がる感情ゆたかな会話よりも、脳を使っていない」  「親ゆびを刺激すると脳がたちまち若返りだす」(長谷川嘉哉、サンマーク出版、2016年)

ちかごろ、寝不足というわけでもないのに昼間から眠かったり、首のうしろの凝りが抜けなかったりのところ、電車で広告を見て、吸い込まれるようにポチしてしまいました(^^;; この本、読んだら、頭の血流がよくなるかも、と欲情しながら。 この手の本はいつも…

331  「憲法九条は最高のプレゼント」  「憲法の無意識」(柄谷行人、岩波新書、2016年)

憲法九条は、アメリカから押し付けられたものでしょうか。あるいは、日本人が自主的に選択したものでしょうか。柄谷(カラタニ)さんは、それ以前に、日本人の集団的無意識の問題だと唱えます。無意識と言えばフロイトですが、フロイトによると、戦争を経験…

330  「SEALDsと恋とABCと」 「求愛」(瀬戸内寂聴、集英社、2016年)

皆さん、こんなに簡単に誰かと恋愛関係になったり、AやBやCになったりするものなのかと、感心したり、うらやましく思ったり(※)、首をかしげたりしながら読みました。まあ、そういう話を、リアルでも聞かないわけではありませんが。(※半世紀の人生、いろい…

(20) 「世の中には、もうひとつ、気づかない側面がある」

どくだみは、匂いが独特できつかったり、暗くじめじめしたところに繁殖したり、抜いても抜いてもまた生えてきたりで、鼻つまみ者のイメージがあるも知れません。けれども、初夏には、質素で真っ白でかわいい花の群れを咲かせ、それに気づく人々の目を休ませ…

29

「わたしが与える、等しく与える」 大国の軍隊に いてもらった方がましだ 牛肉もパンも 腹いっぱい食べられる 彼らがいなくなったら 外国に侵略されて おれたちは餓死して しまうに違いない いや、わたしが おまえたちに与える 日毎の糧を授ける 必要な糧を…

329  「神は神で人は人、とわきまえ抜いた人生」

「カール・バルト 神の愉快なパルチザン」(宮田光雄、岩波書店、2015年)キリスト教関連の本を35年読んできて、ぼくがもっとも大きな影響を受けた三つのうちのひとつが、このカール・バルトです。あとの二つも挙げれば、解放の神学と近代聖書学、ということ…

(19) 「産み、育て、無償で与え、力を満たしてくれる存在」

子どもたちは母親とよく話をします。とくに父親が留守だったり寝室や仕事部屋にこもったりしているときは、とてもリラックスするようで、食卓で向かいあったり、リビングのソファに並んで腰かけたりして、サポートするJリーグ・チームの最近の試合のことや、…

328  「その苦しみやその悪の正反対をきみが想像すれば イマジン オール ザ ピーポー♪」

「闇の迷宮」(ソーントン、講談社、2004年)冷たい雨が永久に降り続くように思えても、きみが青空を想像できるなら、止む日がきっとやってくる、というメッセージをこの本から受けとりました。これを、きみとわかちあいたいと願っています。強く願えば、念…

(18) 「気持ちをわかってくれる人がそばにいて、その人を愛することの平安」

ある人と大喧嘩になりました。その人からは絶縁が言い渡され、仕事も断られました。たしかに声を荒げて抗議をしたりしましたが、そこまでの経緯や相手の非もあり、断絶は一方的な暴力のようにこちらを打ちのめし、心身に相当応えました。 けれども、幸いなこ…

28 「神に向かって歌え、神は海を取り戻してくださった」

さあ、歌おう 神は海を取り戻してくださった 海に引かれた不自然な分断線を 取り去ってくださった 海を殴りつけるハンマーを 取り上げてくださった 神はわれらの力 神はわれらの歌 神はわれらの解放 神は代々闘う人びとの神 神こそが聖闘士 神は戦車と兵士を…

(17) 「遠くにいても、胸に抱けば、潤してくれる」

その人と一緒にいたい、と願っています。声が聞きたい。話がしたい。うれしくなるから。胸が弾むから。気持ちがやさしくなるから、と。しかし、いつも一緒にいられるわけではありません。けれども、一緒にいないようだけれども、一緒にいることもあるのです…

327  「詩の原石ゆえの安心感」

「そばに いるから」(雨森政恵編、中川肇写真、ドン・ボスコ社、2000年) 草や花、子どもたち、石など、小さな風景に、こんなすてきな言葉が添えられています。 「ある時、小さな本の中から 『自分がしあわせかどうか、問わなくてもよい。 しかし、あなたと…

27 「海の上に手を掲げよ」

ファラオが追いかけてきます 後から襲いかかってきます どうして、我々をエジプトから 連れだしたりしたんですか 放っておいてください こんな荒れ野で野垂れ死にするより ファラオの奴隷でいた方が ずっとましです と言ったではないですか 恐れてはならない…

326  「視覚によって、さらにゆたかな霊性を汲む」

「ロシア正教のイコン」(メドヴェドコヴァ著、黒川知文監修、遠藤ゆかり訳、2011年、創元社)花や木、川、空。さいきん、美しいものは、神の美しさの現れだと思うようになってきました。すると、毎日の風景が、味わい深く、楽しみになってきます。昨秋、版…

325  「俺はランボオ、僕は小林秀雄」

「ランボオ詩集」(アルチュウル・ランボオ、小林秀雄訳、1998年、創元ライブラリ) ランボオは「俺は」「俺が」「俺の」「俺を」「俺に」「俺と」と言う。名は体を表す。乱暴なのだ。乱暴なランボオを語る小林秀雄は「僕は」と言う。そんなに乱暴ではないの…

324  「人間の根底にあるものを伝えようとする二千年の努力」

「信じない人のためのイエス入門 宗教を超えて」(スポング著、富田正樹訳、2015年、新教出版社) 聖書にはふつうには信じられないような奇跡がいくつも出てきます。しかし、そんな馬鹿なことがあるはずがない、と最初から相手にしないのは少しもったいない…

(16) 「親の愛をあまり感じられずに大人になった人のための親」

子どもには親の愛が必要だ。親は子どもを叱るばかりでなく、愛することが大切だ。それが子どもの成長にはひじょうに大事なことだ。書き出してみたら、どこでもよく言われるようなことなのですが、大学生のころ、こんな主旨の講演を心をひどく揺さぶられなが…

26 「昼も夜も離れない」

おまえらの主とやらが 我らを撃つことは これで良く分かった ここから出て行ってくれ どこにでも行って おまえたちの主に跪くがよい おまえたちの自由に仕えるがよい わたしはおまえたちの主 寝ずの番をして 奴隷から自由へと解き放つ 約束通りおまえたちを…

323  「黄色い野の花は、綿毛になり、空に帰らなければ」

「たんぽぽ団地」(重松清、2015年、新潮社)今日とは、4月21日、一日だけのことではなく、過去と未来のあらゆる日々が重なりあっているのではないでしょうか。アルバムのある一頁のことではなく、その一頁を真ん中にした前後の厚み、過去と未来の映像の重な…