328  「その苦しみやその悪の正反対をきみが想像すれば イマジン オール ザ ピーポー♪」

「闇の迷宮」(ソーントン、講談社、2004年)

冷たい雨が永久に降り続くように思えても、きみが青空を想像できるなら、止む日がきっとやってくる、というメッセージをこの本から受けとりました。これを、きみとわかちあいたいと願っています。

強く願えば、念が強ければ、実現する、というようなことではありません。けれども、想像力は、固く凍った現実を溶かす力を持っています。想像力、いや、むしろ、想像、想像されるもの、と言い換えた方がよいかもしれません。なぜなら、これは頭や心の中で描き出すものではなく、そこに現れてくるものを見ることだからです。しかし、それを見ることを放棄しなければ、しっかりと見ようとすれば、それは、やはり、力となることでしょう。

舞台は軍事独裁政権下のアルゼンチン。軍政を批判したパートナーと子どもが連れ去られます。ここからカルロスの想像の旅が始まります。彼は、同じように連れ去られた人びとについての想像、いや、見えるもの、ビジョンをその家族に語り出します。パンパの真ん中で、ナチの収容所から生き延びた夫婦に出会います。パートナーや子どものビジョンも見ます。

そして、最後の言葉は、スペイン語で「ヌンカ・マス」、英語なら、NEVER MORE. 読んでいて苦しくなるような、残酷極まりない場面の描写もあります。けれども、最後まで読んでよかったと思います。

「二種類のアルゼンチンがある。軍部がでっちあげる偽物のアルゼンチンと、僕たちが心に思い描くアルゼンチンだ」(p.77)。

ぼくたちは、現政権とは正反対の日本のビジョンを見なければならないし、それはすでに与えられています。

「彼らには自分の歪んだ想像力の向うを見通すことはできない。彼らの想像の世界には色がなく、存在するものはすべて白と黒だ。僕たちを打ち負かすために必要なものを、連中は持ち合わせていない。本当の闘いは、僕たちの想像力と彼らの想像力、僕たちに見える者と彼らが見ようとしないもののあいだにある。失望してはいけない。軍部の中には、はるか彼方を見通せる者はひとりもいないのだから。僕たちの想像力を彼らに冒涜させない限り、僕たちは生き残る」(p.124)。

 彼らの世界が白と黒なら、ぼくたちは虹色のシャツを着ましょう。

「僕はシルビオ・アヤラ。アルゼンチン人。我々は闘う」(p.183)。

ぼくらには美しい名前があります。愛する人びとがいます。ぼくらは闘います。

「電気ショックや針や煙草は、錯乱した想像力が生むもっとも哀れな創造物だ」(p.205)。

ヘイト然り。米軍基地然り。安保法制然り。原発然り。

これらと正反対の幻をぼくたちがしっかりと見るかどうかにかかっているのです。

この本は、アメリカの神学者旧約聖書学者、ブルッゲマンの「預言者の想像力 現実を突き破る嘆きと希望」で紹介されていました。

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