2016-01-01から1年間の記事一覧

(34)「手を握って離さないでいてくださるお方がおられます」

「お手て、つないで、野道を行けば」。今から百年近く前に作られた童謡の一節です。「手をつないで、いつまでもずっと」。十年くらい前にヒットした「雪の華」という歌謡曲の一節です。 子どもは家族や友達や大人と手をつなぎたがります。大人は好きな人の手…

351  「詩が難解な理由の一端に触れたかも」

「ランボー 自画像の詩学」(中地義和、2005年、岩波書店)詩人は目に見えない世界、世界の根源に触れて、それを言葉にしている、と聞いたことがあります。ならば、詩を読んでみよう、できるならば、詠めるようにもなりたい、と思い、いくつかの詩集を手にし…

(33)「誰もが名前で呼ばれます」

「どの子にも、すばらしい名前がある」(Every child has a beautiful name)。ゴダイゴが歌っていた「ビューティフル・ネーム」の一節です。「どの子にもひとつの生命が光ってる、呼びかけよう名前を すばらしい名前を」。番号や記号にされたり、「そこの人」…

誤読ノート350  「風を友とする」 「文学的思考へのいざない」(

誤読ノート350 「風を友とする」 「文学的思考へのいざない」(大河原忠蔵、2000年、東北大学出版会)「ぼくはね、鳥が枝をパッと飛び立つのを見ると、未来を感じます」。丸山薫という詩人が大河原さんにこう語ったそうです。この言葉について大河原さんは次…

36 「わたしはあなたたちを偶像から解き放つ」

見よ、民が偶像を拝んでいる 金を崇めている 権力を求めている 高い地位につきたがっている 暴力で支配しようとしている 武力・兵力を頼みにしている ヘイトを力にしている こんなものを鋳造し これこそ神だと叫んでいる なんとかたくななことか 引き留める…

349  「微分積分が視覚的に何となくわかるかも」   「マンガ『解析学』超入門」(講談社ブルーバックス、2016年)

新聞広告で「微分積分」という言葉を二か月前に見て以来、40年近く前にあきらめた微積に再挑戦してくなって、手にしてみました。 高校程度の微分と積分の考え方を、コミック的なイラストを用いながら、説明してくれています。微分の傾きとか、積分の細かく切…

348  「ヨブ記をざっとユニークに読み通せます」  「あなたはヨブと出会ったか 迷い、躓き、行き詰りながら読む」(今井敬隆、新教出版社、2016年)

ヨブ記は旧約聖書の中でもかなり有名な書物ですが、最初から最後まで読み通したという人は案外少ないかも知れません。本書はヨブ記についての説教集ですが、説教原稿の前にその日のヨブ記の箇所が口語訳でまとめて引用され、また、説教そのものの中でも今度…

347  「中高生とは誰でしょうか」  「転換期を生きるきみたちへ──中高生に伝えておきたいたいせつなこと」(内田樹編、晶文社、2016年)

この手の本は、いつも、中高生だけでなく、二十歳前後の若者から中高年にまで、魅力的な清々しい文章で満ちあふれています。内田樹さんが呼びかけ、加藤典洋、平川克美、小田嶋隆、白井聡、鷲田清一らが、たしかに転換期、あるいは、最近では最大の危機であ…

346  「たとえ、ブレたとしても」  「天晴れ! ぶれなかった人たち 日本史クリスチャン人物伝70」(熊田和子、いのちのことば社、2016年)

この中のどの名前を知っていますか。 瀧廉太郎、八木重吉、山下りん、三浦綾子、新島襄、 内村鑑三、新渡戸稲造、ヘボン、フルベッキ、矢嶋楫子、 津田梅子、河井道、新島八重、キダー、ヴォーリズ、 山本覚馬、杉原千畝、広岡浅子、山室軍平、賀川豊彦 澤田…

345  「牧師の趣味となり土壌となる一冊」   「新約聖書解釈の手引き」(日本キリスト教団出版局、2016年)

この二十年間、旧約聖書、新約聖書、イエスについて、専門家が一般読者向けに書いた本は、年に数冊ずつ程度だと思いますが、絶えず読み続けてきました。ひとつは、趣味としてです。牧師は毎週日曜日、教会で人びとの前でお話(説教)をしますが、専門家によ…

(32)「土から出て、土に還ります」

草は土から生え、やがて枯れ、朽ち、土へと戻っていきます。それが草の本来の姿でしょう。けれども、わたしたちは、草を刈り、ビニール袋に詰め、回収日にゴミとして出しています。焼却炉で燃やされるのでしょうか。土に還れなかったゴミはどこに帰って行く…

35 「あなたたちは外国人を憎悪してはならない、殺してはならない」

あなたたちは外国人を憎悪し 差別し、追い出してはならない 殺してはならない あなたたちが外国で暮らすことが あっても、なくてもだ その人が男でないからと言って その子に親がいないからと言って だれひとり苦しめてはならない もしあなたたちがそうすれ…

(31)「わたしはあなたを責めない。あなたの新しい道を行きなさい。」

「この馬鹿やろう。おまえはいったい何を考えているんだ」。こう怒鳴られる、とびくびくしていました。それまでの二十年間も、ことあるごとにこうでしたから。大学に入学したもののまったく通学せずに一年が経ち、二年目の出直しにも失敗しました。もう退学…

34   「奴隷にしてはならない、奴隷になってもならない」

銀の神々にも金の神々にも あなたたちはもはや 仕えなくてもよい わたしは彼らから あなたたちを解き放つ あなたたちは誰をも 奴隷にしてはならない あなたたちは誰からも 奴隷にされてはならない あなたたちは人を殺してはならない あなたたちが人を殺して…

344  《『もうがまんの限界だ』『正義にもとる』と思ったとき、人は」》 「学校が教えないほんとうの政治の話」(斎藤美奈子、ちくまプリマ―新書、2016年)

安倍内閣、アベノミクス、安保法制、改憲議論、消費増税、沖縄米軍基地、侵略を反省しない歴史観、原発稼働継続、三里塚、自民党・・・。 どれも「おかしい」と思うけれども、そのおかしさが頭の中でうまく整理されていない、その背景とか歴史とかあまりよく…

343  「こんなこともできないのか。これとこれはできたね。」  「アドラー流『自分から勉強する子』の親の言葉」(和田秀樹、大和書房、2016年)

うちの子どもたちは勉強はしないわけではありませんが、成績がそんなに良いわけではありません。ぼくの方が勉強はしなかったわりには、成績は良かったと思います。そんなことで、子どもたちには、ときどきいらいらし、ときどき激しい言葉をぶつけてしまいま…

(30)「人を優劣や価値で判断しない」

毎朝、花瓶の水を換えています。夏場は花も長持ちしません。色があせたり、花びらが落ちたり、形が崩れたり、枯れかかったりした花は、器の外に出してしまいます。ゴミ箱に放り込むのは忍びないので、裏庭の土に置くようにしています。それでも、そういう花…

33 「わたしはあなたたちを奴隷の地からふたたび導き出す」

わたしは主 あなたたちの根本の支え あなたたちを奴隷の国から 導き出した神 そして、ふたたび奴隷になれば ふたたび導き出す神 あなたたちは、王や長や お金や財産や地位や能力や 知恵や知識や組織や人脈や 気分や感情や信念や信条を 根本の支えとしてはな…

342 「九条と国際連盟が世界を変革する」「『世界史の構造』を読む」(柄谷行人、インスクリプト、2011年)

ぼくのような凡人には、マルクスやカントがどういう考えを持っていたか、読んだり、論じたりすることも難しいのですが、柄谷行人(からたに こうじん)さんは、マルクスを乗りこえ、カントに導かれて、世界革命を構想されるのですから、驚くべき天才です。も…

(29)「自分の外に根ざした言葉」

「借り物ではなく、自分の言葉で語ろう」などとよく言います。たしかに、本当にそうかなと考えもせずに、さいきん聞きかじったもっともらしい言葉を鵜呑みにして、ぺらぺらとしゃべってしまうのはどうかなと思います。 けれども、言葉は聞いたり読んだりして…

32 「勝利が降り立ち、鳴り響く」

ふもとに民を立たせよ わたしを民に知らせるために 山は煙に包まれよ わたしは炎とともに いただきに降り立つ 山は激しく震えよ 角笛は鳴り響け わたしは雷鳴で答えよう これこそがわたしの勝利 あなたたちの勝利 わたしはけっして負けない あなたたちもけっ…

341  「微積の概念と公式、応用問題を丁寧に説明」 「高校生が感動した微分・積分の授業」(山本俊郎、PHP新書、2015年)

高校3年時は理系クラスに属し、一浪して、そんなに難しくもないがそんなにも易しくもない理系の大学に入りました。けれども、じつは、すでに、数?の行列あたりからわからなくなり、数?はチンプンカンプンでした。それでも、数?だけできて、共通一次重視の入…

(28)「なにか生き生きとしたもので、心や体が満たされたいものですね」

今日は何もする気が起こらない、一日中、家でごろごろしていたい、という日があります。体を動かすのが大変だ、いや、それどころか、どうしても体が動かない、という時があります。気持ちがしっかりしない、やる気が出てこない、気持ちが重くて仕方がないこ…

31  「殺さず、盗まず、戦わず、偽らない民となりなさい」

人びとにこう語りなさい あなたの同胞に告げなさい わたしが抑圧者を引きずり下ろしたことを あなたたちは見たはずだと わたしの翼にあなたたちを乗せて飛んだことを あなたたちは忘れないはずだと わたしはあなたたちに いのちの憲法を授ける あなたたちは…

340  「読者なき書き手、聴者なき語り手の心臓を慰める言葉」 「往復書簡 悲しみが言葉をつむぐとき」(若松英輔、和合亮一、岩波文庫、2015年)

ある人びとの言葉は本になりますが、多くの人びとの言葉は本棚になります。ちょうど、風に転がる紅や黄の落葉の下には、悲しみ色や沈黙色した枯葉の堆積があるように。ぼくらの言葉は、自分のパソコンの中に貯蓄され、ネット上の倉庫にも押し込まれ、ある言…

339  「不意打ちによって非常識な心に飛躍すれば詩が読めるかも」 「詩を読む人のために」(三好達治、岩波文庫、1991年)

ランボーやリルケの詩は読むのがとても難しい、とても苦労します。それは、意味を考えるからだ、意味を考えないでそのまま受け止めるとよい、という助言もいただきましたが、脳は既知の情報に照らし合わせて何とか意味をつかもうとしますから、意味が分から…

338  「花が愛おしい、そのわけ」  「殉教者」(加賀乙彦、講談社、2016年)

17世紀、徳川の世の初め。大荒れの航路、砂嵐の陸路。5年をかけ日本からローマに辿り着くも、そこで修道士となり、神父となるや、また7年の航海を経て、日本を目指したペトロ岐部カスイ。 キリシタン禁令ゆえにやがて捕まり死刑にされることが分かっているの…

(27)「わたしたちとつながり、生かしてくれる、目に見えないたいせつなもの」

「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない」。星の王子さまの有名な言葉です。「ドブネズミみたいに美しくなりたい 写真には映らない美しさがあるから」。ザ・ブルーハーツというバンドが30年近く前に歌った「リ…

30 「その岩を打て、清水がほとばしる」

飲み水がない 喉がからからだ こんなところに連れ出して おれたちを殺す気か こんなことなら 昔のままがずっとよかった そうだろうとも では、昔を取りもどしてやろう あの帝国に連れ帰ってやろう あそこなら飢えることも 渇くこともない おれに付いてこい …

337  「語り切れない悲しみを語り、言葉にできない喜びを書く」

「そして(ジュニア・ポエム双書、谷川俊太郎・自選詩集」(谷川俊太郎、銀の鈴社、2016年)詩人は、見えない世界を書いている、天使の声を聞きとっている、とどこかで耳にしたことがあります。谷川さんは「かみさまなんていないんだから」と言いますが、「…