「心を灯すマッチのように」(高野澄子、KADOKAWA、2014年)
東京純心女子学園の理事長であるシスター高野が、創立者であり、日本のマザー・テレサとも呼ばれたシスター江角ヤスの言動を想い起こして、まとめた一冊。
日本のカトリック女学校は、このような具体的な行動指針による道徳教育をしているのかなと想像しました。
たとえば、「身ぎれいにすることは、香り立つ清らかな人をつくる」「お辞儀をするのに一秒もかからないし、一銭もかからない」「謙遜は口だけでなく、実行してこそ美しいのです」
渡辺和子さんのような本を狙ってこんな文句の羅列になってしまったような気もしますが、もう少し浸み込む言葉もありました。
江角さんは一度決めたことを翻すことがあったようですが、それについては、「一所懸命どうしたいいかと日々お祈りしているの。お祈りしているから変わるのよ」と語ったことがあるそうです。なるほどと感心しました。
祈りをめぐっては「江角先生は非常に頭のいい方だったようだから、余計に祈る必要があって大変だったでしょう」という生徒さんの言葉にもうなずきました。頭のいい人はすぐにいろいろなことを考えつく。即決しないで、祈って、さらにいろいろ考え、ときには、最初の考えを根本的に変える場合もあるのでしょう。
「『素晴らしい』と感じる人物を見つけて、真似てみなさい」。大事なことが伝わる道はいくつかありますが、そのひとつは、受け手が送り手に憧れ、良い意味で模倣したいと思うことです。情報だけでなく、そのもっと奥にあるものが伝わるのではないでしょうか。
一番おもしろかったのは、むしって風に飛ばしてしまった鶏の羽と同じように、発してしまった悪口も回収できない、という話です。現代のネット社会では、ますます心得ておくべきことがらだと思いました。