344  《『もうがまんの限界だ』『正義にもとる』と思ったとき、人は」》 「学校が教えないほんとうの政治の話」(斎藤美奈子、ちくまプリマ―新書、2016年)

 安倍内閣アベノミクス、安保法制、改憲議論、消費増税、沖縄米軍基地、侵略を反省しない歴史観原発稼働継続、三里塚自民党・・・。

 どれも「おかしい」と思うけれども、そのおかしさが頭の中でうまく整理されていない、その背景とか歴史とかあまりよくわかっていない、という方におすすめの一冊です。自由民権運動キリシタン弾圧にまでさかのぼりますが、最近の小泉、安倍内閣、領土問題などもよくわかります。

 どんどんわかり、どんどん読めて、それでいて、ああなるほど、と整えてくれます。20-25歳向けに書いたということですが、この際、三十代以上の人も読んでしまいましょう。

 敗戦後、じつは、思想的には左派、民主主義、護憲が主流であったのに、いつから、右派、改憲などが台頭してきたのでしょうか。斎藤さんは小林よしのりの「戦争論」が右派の「バイブル」になり、「世間の空気は、ここから変わったと私は思っています」と記しています。
 
そうかもしれません。ならば、この本は、左派(と言っても、民主主義、個人の人権などを大切にする人びと)の「バイエル」になることでしょう。と言っても、単純なことの反復練習ではありません。世界・日本・政治歴史旅のような楽しさです。

 では、悪政はいかにして打ち破られるのでしょうか。「どんなに強固な支配体制の下でも、『もうがまんの限界だ』『正義にもとる』と思ったとき、人は勇気をふるって立ちあがります。もちろん死ぬ覚悟で、です」(p.23)。

 沖縄の人びとは、限界を限界まで経験させられ、立ちあがっています。わたしたちは、沖縄の人びとが受けている仕打ちを「正義にもとる」と、立ちあがらなければならないでしょう。

 「『ゆる体制派』だった人が反体制派に転じるのは、ひとつは、足尾銅山事件の被害者のように、なんらかの社会的事件の当事者になってしまった場合です。もうひとつは、自分が当事者でなくても、社会正義の立場から『みんなの要求を無視する政府のやり方はおかしいじゃん』と思った場合です。ちゃんとした反体制運動には、『おかしいじゃん』と思った多くの支援者や支持者や賛同者がつき、大きな大衆運動につながる可能性がある。だからこそ体制側はおそれるのです」(p.40)。

 おかしいことを伝え、仲間を増やす。王道ですね。しかし、おかしいことをおかしくないという世の中になってしまいましたから、おかしいことの伝え方もさらなる工夫が必要でしょう。この本のように。

 「基本はやっぱり私憤ないし義憤でしょう。なんでワタシがこんな目にあわなくちゃいけないわけ? どうして彼や彼女がああいう境遇に置かれているわけ? そう思った瞬間から、人は政治的になる」(p.207)。

 そうですが、右派も、やはり、原動力は、私憤と義憤でしょう。「どうして、日本人のおれたちがこんな目にあわなくてはならないのか。あいつらのせいだ」。

 どうしたらよいのでしょうか。私憤が私利私欲ではなく普遍の正義に基づいていることですね。たとえ、自分に不利になっても、このことをおかしいということは、普遍の正義に基づいている、人間一人一人の権利を守るという理念に基づいている、そういう義憤でしょうか。
 
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