2013-01-01から1年間の記事一覧
「アメージング・グレース 光と希望を! 絶望から救われた奴隷商人の物語」(中澤幸夫、2013年、女子パウロ会) 「アメージング・グレース」として知られる讃美歌の作詞者、ニュートンの生涯。 前半は、少年時代から、軍艦、奴隷貿易船で過ごす青年時代まで…
「社会を変えるには」(小熊英二著、講談社現代新書、2012年) 小熊さんと二歳しか変わらないぼくは、1960年から80年まで、社会の出来事、政治、新聞、ニュースにはほとんど興味を持たずに過ごしました。しかし、本書により、生まれてから二十年間の社会と政…
「黒い海の記憶 いま、死者の語りを聞くこと」(山形孝夫著、岩波書店、2013年) この本では、死者以外にも、病者、女性、ユダヤ人、イスラムの人々、などについて語られています。 息子・光さんの「僕はもうダメだ。二〇年も生きちゃ困る」という言葉に何と…
「井上ひさしの読書眼鏡」(井上ひさし著、中央公論新社、2011年) 誰もが名前を知りながら読んだと言う人はほとんどいない大江健三郎の小説「「自分の木」の下で」「取り替え子(チェンジング)」「憂い顔の童子」。 「研究社シェイクスピア辞典」「日本史…
「水の手紙 群読のために」(井上ひさし著、萩尾望都絵、平凡社、2013年) 井上ひさしさんと萩尾望都さんという、おもいがけないコラボ。 小学生の副読本にでもなるような平易な文章。 井上さんの芝居や小説、エッセイを知る者には物足りない。 けれども、そ…
「木の上の軍隊」(井上ひさし原案、蓬莱竜太作、「すばる 2013.5」所収) 沖縄、伊江島。 敗戦後、二年間、ガジュマルの大樹に身を隠していた兵士たち。 沖縄出身の新兵。他府県からの上官。 井上ひさしは、この事実を根っことする戯作の構想メモだけを残し…
「プロカウンセラーの聞く技術・話す技術」(監修:諸富祥彦他 編集・発行:マルコ社) ぼくは人の話を聞くのが苦手。 これまで読んだ本で学んだように、傾聴して、相手の気持ちに寄り添おう、と思っていても、相手の話に集中しようとすると、力が入って、五…
「私はだれでしょう」(井上ひさし、「すばる 2007年3月号」所収) 戦災で離ればなれになった人々を再会させようとするNHKラジオ番組「尋ね人」。 そのスタッフは、ラジオが生んだ大スターだった京子、同じく元アナウンサーで今は脚本家をめざす三枝子、神田…
「マルティン・ルター ―ことばに生きた改革者」(徳善義和、岩波新書、2012年) 信仰のない人は、神に救われないのだろうか。 信仰の弱い人は、どうなのだろうか。 信仰によって、神から義とされる(神の前に立つことが許される、滅ぼされない、という意味だ…
「ガリバーの冒険」(井上ひさし/文 安野光雅/絵、文藝春秋、2012年) 井上、安野ファンには、たのしい一冊。44年前、この最高コンビによって、ガリバーの絵本が出ていた。ふたりでの最初の仕事?井上さんが旅立って二年目の春(2012年)、安野さん…
「宗教のレトリック」(中村圭志、トランスビュー、2012年) レトリックと言うと、現実から離れた、あるいは、現実をごまかすための、机上の巧みな言葉遣い、という印象もあるだろう。 けれども、言葉以前の何かを、どうにか言葉にして伝えるための手法、と…
「ヒタカミ黄金伝説」(山浦玄嗣、共和印刷企画センター、1991年) ケセンは黄金の大産地だった。しかし、八世紀、ヤマトはそれに目をつけ、侵略を激しくする。ケセンやエミシ(※)の民は、アテルイなどのリーダーを掲げ、よく抵抗する。 ヤマトの支配浸透は…
「言語小説集」(井上ひさし、新潮社、2012年) 井上ひさしさんは、言葉の天才です。 けれども、井上さんの言葉は、みやびやかでもなければ、官能的でも、すずしげでもなく、あるいは、スマホのカメラで撮ってネットに載せた写真のようにくっきりあざやかで…
「新島八重ものがたり」(山下智子、日本キリスト教団出版局、2012年) 140頁の小著ながら、八重の生涯がわかりやすくまとめてあります。また、兄の山本覚馬や夫の新島襄のみならず、八重を批判する者たちも含めて、まわりの人物も要領よく描かれています。 …
「改訳新版 共に生きる生活」(ディートリヒ・ボンヘッファー著、森野善右衛門訳、新教出版社、2004年) 霊性と言っても、オカルトや憑依、超常現象のことではありません。神の前に立ち、その姿勢を基として、隣人と社会、また、自分の前にも立つありよう、…
「双頭の船」(池澤夏樹、新潮社、2013年) 池澤夏樹は被災者ではありません。けれども、3月11日直後から、被災地に入り、見つめ、聴き、感じ、考え、よく書いてきた作家です。三月十一日文学とでも呼ばれるものが、やがて、東北の民中心に担われるように…
「想像ラジオ」(いとうせいこう、河出書房新社、2013年) つぎに被災地に行く時は、ボランティア・ワークだけでなく、死者の前で手を合わせ、ゆっくり祈りたいと思った。けれども、それは、この世をうろついてほしくない、化けて出てほしくない、ということ…
「旧約聖書物語 上・下」(ウォルター・デ・ラ・メア著、阿部知二訳、岩波少年文庫、2012年) 旧約聖書の前半は歴史物語のスタイルをとっていますが、登場人物の複雑で多彩な心理や、その舞台となる自然や建物には、ほとんど触れられていません。 本著は、こ…
「abさんご」(黒田夏子、文藝春秋、2013年) 文字を読んでいるのか、それとも、ゆらゆらと伸び縮みするくらげの群れのやや濁った水槽を眺めているのか、わからなくなってしまう。墨の乾かない山水画、母の胎での浮遊、あの世、蛍の点滅・・・そんな感じです…
「演技と演出のレッスン 魅力的な俳優になるために」(鴻上尚史、白水社、2011年) この世界が舞台なのか、演劇が人生なのか。 人が役者なのか、演じることが生きることなのか。 「演技と演出のレッスン」と題されたこの本ですが、俳優などではないボクたち…
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「やっぱりふしぎなキリスト教」(大澤真幸他、左右社、2012年) 何がフシギなのでしょうか。キリスト教など重要視していないように見える近代社会にこそ、じつは、非常にキリスト教的なものがある。だからキリスト教はフシギだ、と大澤さんは言います。 こ…
「ツナグ」(辻村美月、新潮文庫、2012年) 死んだ人をホテルの一室に呼び出して、再会をリクエストした生者とひきあわせる。これがツナグの仕事。 しかし、読み進めば、これが推理あるいはオカルト小説でないことは、すぐにあきらかになります。 では、死者…
「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくための基礎知識」(田崎晴明、朝日出版社、2012年) 原子力は現代の「荒ぶる神」であるから、ヨーロッパの原発は神殿に模されている。内田樹さんがこのように述べています。 「荒ぶる神」の「荒ぶる」とは、とき…
「55歳からのハローライフ」(村上龍、冬幻社、2012年) 五十代以上の男は、いや、おそらく、若い男たちも、妻のことなど、まともに考えない。 「退職後はいつでも 妻と二人で 悠々自適な旅を」などと思い立ち、妻に相談なく、一千万円のキャンピングカーを…