99 「技術って言うより、姿勢かも」

「プロカウンセラーの聞く技術・話す技術」(監修:諸富祥彦他  編集・発行:マルコ社)
 
 ぼくは人の話を聞くのが苦手。

 これまで読んだ本で学んだように、傾聴して、相手の気持ちに寄り添おう、と思っていても、相手の話に集中しようとすると、力が入って、五分と持たない。リラックスして、相手の話の流れに身を任せていると、もっと聴けるのではないかな、とも思う。

 そんなことで、この手の本は、ときおり読みたくなる。人の話をしっかり聞けず、頭の中に相手の声ならぬ自分の声が浮かんできて、それを口に出したくなったり、出す準備をしたりしてしまっているという自覚だけはある(と思う)ぼくには、この手のタイトルは魅力的。これまで何冊も読んできたが、この本を読めば、こんどこそ、ましな聞き手になれる、という夢を抱いてしまう。

 この本は、出版社が編集したようだけど、一応、諸富先生とか水島広子さんとかの監修というだけのことはあって、ビジネスマンのスキルアップやら自己啓発やらの本よりは、はるかに良質だ。臨床心理の初級本で言われていることが、さらに平易に述べてある。

 今回の収穫のひとつは、相手の話をまとめたがるのはよくない、という観点。「なんかさびしい感じがするんです」という言葉に対して、「そうですかぁ、孤独感があるんですね」とか、「私って何やっても駄目なんです」に対して、「あなたは絶望してるんですねぇ」と返すのは、一見、カウンセリング本で勧められているあいづちや相手の言葉の反復に似ているけど、じつは、抽象的に「まとめ」てしまっていて、相手には、ああ、気持ちをわかってもらえた、とは思われにくいようだ。

 「まとめ」と言えば、ぼくは、相手の話を筋あるものとして理解しよう、自分の中で、相手の訴えを整理した状態でわかろうとして、5W1Hのような質問をしたり、この形式でまとめて、こういうことですね、と訊いてしまったりしていたことも、よくあったと反省。これじゃあ、尋問ですね。

 それから、相手の話を聞きながら、それを善悪とか、優劣とか、それはこうしたら良いのにとか、そういう観点で量ってしまっていました。そういうのは横において、相手の気持ちとして、聞くべきでした。いや、前にもそういうこと、学んだんだけど、どうもできなくて。

 相手は助けてあげるべき無力な存在ではなく自分で解決できる力があると信頼すると、おれが教えてやろう、助けてやろうとアドバイス攻めにしてしまって(というかアドバイスはひとつでもすべきでないようだけど・・・)、ああこの人、わかってくれないなあと相手に思わせてしまうことを避けられるとか。

 話し方についても。これはカウンセリング的というよりは日常の場面だけど、「うるさい」というより「ぼくは静かにしてほしい。音量を下げてほしい」と言うとか。「遅刻をするのはけしからん。だから仕事も駄目なんだ。そもそもお前の人間性は・・・」と言うより、「遅刻は困るから、何とか協力してくれないか」というように、遅刻のことだけにしぼり、人格攻撃はしないとか。

 「どうか、許してください」というのも、相手からは、こいつは迷惑をかけた上に許しまでも要求してくるのか、と思われるので、「すみませんでした」「申し訳ございませんでした」とお詫びだけに徹するとか。

http://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%AE%E8%81%9E%E3%81%8F%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%83%BB%E8%A9%B1%E3%81%99%E6%8A%80%E8%A1%93-%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E7%A4%BE/dp/4861136741/ref=cm_cr-mr-img