82 「絶望的なまでに、相手のことを考えない男ども。だけど、あえて変化の兆しを求めるとしたら」

「55歳からのハローライフ」(村上龍、冬幻社、2012年)

 五十代以上の男は、いや、おそらく、若い男たちも、妻のことなど、まともに考えない。

 「退職後はいつでも 妻と二人で 悠々自適な旅を」などと思い立ち、妻に相談なく、一千万円のキャンピングカーを買おうとする夫。

つれあいのペットが死にそうでも、冷淡な男・・・。

 ディスコミュニケーションに苦しめられ、望みを持てない女性たち。

 それでも、そんな女性や男に、あえて何かの兆しがあるとしたら。

 女の人は自然と自分と重なるかもしれないが、男は、これを我がこととして読めるかどうかに、希望の有無がかかっているだろう。

 ダメな男と、もうひとつ、人間だけがバリエーションを楽しむという、こちらはすてきなあること。ふたつの共通テーマでつづった短編集。